「ご利益がある」と信じるから多くの日本人は初詣でに出かけ、願いごとがあるときには神社やお寺にお参りに行く。そんな風習が根付いています。今回ご紹介するのは「眼病が治る」と伝わる新井薬師。近くには哲学堂公園もあり、ぶらりとお出かけするのにもってこいのスポットです。 |
梅の木の穴が光って発見された弘法大師作の黄金像がご本尊の新井薬師梅照院
新井薬師では毎月8日、18日、28日の縁日に護摩祈願法要を行っています
「目がかすむのよ」なんて話を母にしてから数日後のことです。 どこかに出かけていた母から、「はい、これ!」と「め」の字が絵馬に描かれ、鈴のついたお守りを渡されました。 新井薬師の「めめ絵馬鈴守」で、眼病平癒・家内安全のお守りだそうです。なんでも、新井薬師には「治眼御守」もあるらしく…。 「どうしたの、わざわざ行ってくれたの?」と私。 「そうよ。目が悪くなったら新井薬師さまは、江戸時代からの常識よ」と誇らしげに母。 東京都中野区にある新井薬師梅照院のご本尊は薬師如来と如意輪観音の二仏一体の黄金像で、弘法大師の作と伝わっています。 元々は鎌倉時代の武将の守護仏でした。 それから長い年月が流れた1586年、清水の湧く新井の地に相模の国から来た僧侶が小屋を建てて修行していたところ、不思議な現象と共に仏像が現れました。 僧侶がお堂を造って仏像を安置したのが新井薬師の起源です。 |
清水のある新井の里だっただけに、「水」が印象的です 境内には井戸水が出ており、持ち帰って目を洗ったり、飲料用に使う人も 「ねがい地蔵」を井戸のお水で拭いてから願いごとをしました
二代将軍徳川秀忠の第五子が眼病を患ったときに新井薬師に完治を祈願したところ、それが快癒して以降、「目の薬師」と呼ばれるようになりました。 さらに、如来の啓示によって「小児薬」が調整され、その評判がよかったことから「子育て薬師」とも呼ばれています。 つまり、新井薬師は家内安全や厄除けのほかに、眼病と子育てにとくにご利益があるパワースポットだったのです。 お守りを見ても眼病に関わるお守りや「めぐすりの木」、病気平癒を願っての「薬つぼ守」などがありました。 ところで、新井薬師にはもうひとつのご利益がありました。 それは「水」です。 ご本尊を祀るお堂を建てた相模の国から来た僧侶も、この土地の水を気に入って小屋を建てたといいます。そのころはきっと、おいしい清水が湧き出ていたのでしょう。 いまは境内に井戸水が出る場所があります。この水が無味無臭ですっきりとした味わい、なかなかおいしいのです。 お参りがてらに手にしたペットボトルに水を入れていく地元の方をたくさん見かけました。 「このお水でお茶を入れるとおいしいんだよ」と、お散歩途中にお参りをしてお水をいただいていくというおばあさんが教えてくれました。 |
これが「めめ絵馬鈴守」です。読者のみなさまに代わり、いただいてきました。目の調子が悪い方、今回のプレゼントですのでご応募ください! 孔子、釈迦、カント、ソクラテスの世界の四大哲学人が祀られている「四聖堂」 「六賢台」と「無尽蔵」。緑に包まれて建造物や池、丘が巧みに配置されている哲学堂公園
哲学堂公園は哲学者であり、東洋大学の創立者である井上円了博士によって明治37年に造られました。公園内にある「四聖堂」は孔子、釈迦、カント、ソクラテスを祀っており、これが哲学堂の名前の所縁になっています。 園内には菅原道真、聖徳太子や中国の荘子などの東洋の六賢人を祀った「六賢台」や“哲学が宇宙の真理を研究する学問”であることから名付けられた講堂「宇宙館」など、多くの建物があります。 さらに、池や休憩所などにも意味があり、訪れた人々は自分の心と対話をしたり、人生や宇宙に思いを馳せたり…。 精神修養の場として創設されただけあり、その後に都立公園時代を経て中野区の管轄になった今でも「哲学」の雰囲気が漂います。 また、宇宙館などは実際に使用されていて、夏には「幽霊妖怪ばなし」会も開催されました。 ☆ 厄除けと目、子育てにご利益がある新井薬師。心を見直せて宇宙の視線がもてる(かもしれない)哲学堂公園。 首都圏の人が行きやすいパワースポットです。 |
< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。