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冬になると日本のほぼ半分近くの地域が雪に覆われる。「寒い」と閉じ籠ってしまうか、「雪で遊ぼう」と外に出て雪体験するか。遊び好きを自認するなら、多いに外に飛び出して雪体験しよう。

北国の動物園などでは冬に元気になる動物が迎えてくれる
【旭山動物園】


紋別にある流氷科学センターでは流氷、冬の海に関する展示が
【北海道立オホーツク流氷科学センター】
僕の叔母はもう70歳を超えているのだが、普段は東銀座で小さいお店を出し、お客さんがオーダーした肴をせっせとキッチンで作っている。ハワイが大好きで、すでに何回も行っているから、お休みがとれれば温かいところに行きたいんだろうな、と漠然と思っていた。
しかし、違った。

僕が旅行雑誌などの仕事をしている関係で、日本の各地や海外旅行に詳しいのを知っている叔母が、「ねえ、寒風吹きすさぶところに行ってみたいのよ」と言ってきた。

北海道の沿岸の小さな町に行き、雪が舞い上がるような寒風を肌で感じ、その夜は漁師さんが集まるスナックで1杯やりたいそうだ。

驚いた。そんなこと思ってたんだ!

ドラマ『北の国から』や吉永小百合が主演して最近公開された『北のカナリアたち』では、俳優・女優たちが大寒波の中で演技を強いられているシーンがある。

テレビや劇場で見ているだけで、「寒そう!」と身体が縮こまる思いになるが、叔母は生涯に一度、そういうところに行くのが夢だという。

そこに住んでいる方にとっては、毎年の慣れもあるだろうし、冬を迎えるたびにうんざりする気持ちになるかもしれない。
しかし、都会に育った叔母にとって、「せっかく四季があるし、そんな地域もあるのだから、行かないともったいないわよ」となるのである。

流氷を砕きながら進むガリンコ号。生涯一度は乗りたい
【流氷砕氷船ガリンコ号Ⅱ】


大雪像が大通り公園に連なる札幌の雪まつり
【さっぽろ雪まつり】


新潟県十日町の雪まつりも歴史がある壮観なものだ
【十日町雪まつり】
それから僕は叔母に適したツアーを探した。

冬の北海道ツアーでは、札幌泊や旭川泊は目立つのだが、そこでは「漁師のいる沿岸の街のスナック」は望めない。

ようやく紋別、旭川、札幌に泊まる3泊ツアーを見つけた。

紋別は魚介類などの水揚げも多い北海道東海岸の街だ。ここには冬にしか体験できない「ガリンコ号」の流氷ツアーがある。前部についたスクリューでぐりぐり流氷を砕きながら厳寒の海を行くのだ。

運がよければ流氷の上のアザラシやワシも見られる。

そして、この街には漁師が集まるようなスナック街がある。店舗数は多くないが、僕はそこで雪降る夜、熱い焼酎とカラオケを楽しんだ。

その後ツアーは旭山動物園、「層雲峡氷瀑まつり」などを見て札幌に出て「雪まつり」を堪能する。

まさに「冬!!!」。冬にしかできない雪体験満喫コース。叔母は大喜びでパンフレットを受け取ったのだった。

さて、雪の中の祭りは全国でも盛んに開催される。

新潟県の十日町ではこの冬に第64回の「雪まつり」が行われる。そして、札幌より素朴で温かみのある祭りとして人気がある。

全国に目をやれば、かまくら祭り、雪の中にぼんぼりが設置される祭りなど、ネットで検索すれば多くの雪まつりやスノーフェスティバルが見つかる。

また、雪が舞台の神事も数多い。たとえば、新潟県浦佐・吉祥山普光寺(毘沙門さま)の「裸押合い祭り」、長野県野沢温泉の「道祖神祭り」などの伝統行事は冬の風物詩になっている。

これらも冬ならではの雪と合致したお祭りだ。

キッズのための特別スキー教室などを実施するスキー場が増えた


スキーができなくても大丈夫。スノーチューブで雪遊び


スノーシューなどで雪遊び。雪山体験教室を実施しているところも
【バックナンバー・雪にまみれて大笑い】
北海道へ、期間限定の雪まつりへと行かなくても、雪体験はいくらでもできる。

現在のスキー場は、パパ&ママがユーミンの曲にノリノリになって観た『私をスキーに連れてって』でブームになったころとは大幅に違う。

あのころ、スキー場の主役は若者だった。しかし、現在のスキー場の主役はベテランスキーヤーとキッズたちだ。そのために、ほとんどのスキー場がファミリー対応に余念がない。

スキーができなくても(スキーをしなくても)家族みんなで楽しめるソリ専用スキー場(そこにはキッズでも乗れるスノーエスカレーターがついているので斜面の上まで楽ちんにあがれる)やチューブ(タイヤ滑り)、スノーモービル・ライドなどを用意しているところもある。

つまり、スキーをするためにスキー場に行くのではなく、雪と遊ぶためにスキー場に出かけるのだ。

さらに野生の動物たちの足跡や冬の森を見学するための、雪原ウォッチングツアーを実施しているところもある。これはこの連載で「雪にまみれて大笑い」と題して掲載したので、そちらを見てほしい。



冬に雪で遊ぶ。防寒対策を施す、手袋を多めに持つ、大雪だったら遊ぶのを諦める、などのいくつかの要領さえわかれば、比較的気軽に雪遊び体験はできる。

夏が暑いと冬は寒くて雪が多いとのデータもある。この冬、雪は期待できそうだ。ぜひ雪遊びに出かけよう。
< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」を連載
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