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山梨市を流れる笛吹川をさかのぼると、山間の渓流沿いに大きな一軒宿が姿を現す。武田信玄が湯屋の創設を指示し、臣下の武将が引き継いだ甲州の名湯。信玄ゆかりの温泉はいまも多くのファンに親しまれている。
川浦温泉 名湯の宿 山県館
所在地:山梨県山梨市三富川浦1140
TEL:0553-39-2111
日帰り入浴料金:大人1500円、子ども800円
日帰り入浴受付時間:11:00~15:00(14:00受付終了/混雑時に営業中止の場合あり)
泉質:アルカリ性単純温泉
湧出口温度:43.2度


檜の巨木を組み上げてつくられた「信玄公岩風呂[渓流雅野湯]」。混浴で30名ほどが入浴できる。笛吹川のせせらぎと山々の彩りを堪能できる


庭園を望む「石楠花の間」の客室露天風呂。現在は信楽焼の浴槽にリニューアルされている。内湯を含め全館温泉かけ流し。


「信玄公岩風呂」へと続く渡り廊下が温泉への期待感と旅情をかきたてる


部屋を引き立てるテーブルや鏡台など蒔絵の漆家具は女将のこだわりだ

写真:『温泉遺産』(実業之日本社刊)より
人気のオンラインゲームに「戦国IXA(イクサ)」という基本料無料のシミュレーションがある。
ゲームの概略はこんな具合だ。自分の城を構えて木や綿、食糧などの生産品を増やし、武将のカードを集め、鍛練をして兵や城のランクを上げ、仲間の城主とともに他国と争う。  

オンラインゲームがどのようなものか知りたくて、一時期ハマっていた。
強い武将カードの購入のためにお金をつぎ込んだり、早くランクを上げるために膨大な時間をかけたりする人もいる。
私はもっぱらお金をかけずにゆっくり成長させる、非積極的なプレーヤーだった。  

さて、このゲームで兵士を鍛練する過程の話だが、城のランクが上がると「騎馬兵」はより強い「精鋭騎馬」と呼ばれるようになる。さらにランクが上がれば「赤備え」だ。  

歴史好きの人はここでピンとくる。

強い騎馬軍団がなぜ「赤備え」と呼ばれるのか、その理由がわかるからだ。  

「赤備え」とは、戦国時代の部隊編成の一種で、鎧兜や甲冑、具足、陣羽織など、あらゆる武具を朱塗りにしているのが大きな特徴だ。
朱に発色させるのはコストがかかり、武勲を立てた者のみが得られる勲章のような色。これを集団で組織し、騎兵のみの騎馬隊として仕上げたのが、甲斐武田氏の重臣で武田二十四将のひとり、飯富虎昌(おぶとらまさ/1504-1565)だ。

武勲を上げねば土地が得られない次男を中心に組織され、斬り込み隊として戦では先陣をきって活躍。赤備えは精鋭部隊の代名詞となった。  

だが、永禄七年(1564)、義信事件が起こる。
武田信玄(1521-1573)の嫡男・義信(1538-1567)と飯富虎昌らが共謀し、信玄暗殺の謀反を企てたとして処刑される。
義信は親今川派の立場にあり、今川領国への侵攻を志向する信玄との間に軋轢があったものと考えられている。

その後、赤備えを継承したのはすでに300騎を率いていた大将・飯富三郎兵衛尉。のちの山縣正景(1529-1575)であった。  

正景は、武田軍が圧勝した三方ヶ原の戦い(1573)で、浜松城から武田軍の背後を狙って出た徳川家康(1543-1616)本陣に突進。家康に自害を覚悟させるほどの戦いぶりだった。  

織田・徳川連合軍との熾烈な争いとなった長篠の戦い(1575)では、武田軍劣勢の中、討ち死に覚悟で敵陣に突っ込み、正景は全身に銃弾を受けて戦死する。
しかし、落馬せずに采配を指示したまま絶命したという説話が残るほど、勇猛な武士として知られている。  

その後、赤備えは徳川精鋭部隊で四天王にも数えられる井伊直正(1561-1602)や、真田信繁(幸村/1567-1615)にも採用されるようになる。
赤備えは山縣隊だけでなく、他の武将から恐れられる最強部隊のイメージとして定着するようになるのだ。  

ところで、武田信玄は、川浦地区の不動の滝付近に湧出する「川浦の湯」について、永禄四年(1561)に湯屋の開発を命じている。
ここには大きな洞窟があり、温泉が湧きだしていた。
発見は建久五年(1194)五月(『日本鉱泉誌』より)。鎌倉時代から伝わる温泉だ。  

正景七男と伝えられる山縣三郎兵衛信継はのちに家康に仕え、川浦村500石を賜り川浦口留守番を命ぜられる。  

この歴史をいまに伝える宿が残っている。  

湯宿は安政三年(1856)、第13代当主山縣信徳が操業。
現在も14代目に当たる山縣信一郎氏、15代目善行氏が引き継ぎ、「山県館」という名で営業を続けている。

山梨市内を流れる笛吹川の上流に位置し、秩父市に向かう国道140号線沿いにある渓流沿いの一軒宿だ。  

ここは正真正銘の武田信玄ゆかりの湯。  

湯量は毎分1250リットルと豊富で、ふたつの大浴場のほかに、露天の岩風呂、ふたつの貸切風呂、いくつかの露天風呂付き客室と、豊富な源泉をふんだんにかけ流ししている。
湯はアルカリ性単純温泉で匂いもなく、クセがないのでどんな人でも違和感なく温泉を堪能できる。  

ふたつの大浴場は12時と21時に男女の利用が入れ替わり、趣の異なるお風呂をどちらも楽しめるようになっている。  

ぜひ行ってみてほしいのが階段で渓流沿いまで下って行く「信玄公岩風呂」だ。
ここは混浴になっており、岩肌から張り出した檜の迫力ある御殿造りの建物と、野趣あふれる岩の浴槽が信玄公の名にふさわしい、豪快な雰囲気に満ち溢れている。  

かつては限られた武将しか入湯を許されなかった秘湯が、こうしていまも息づいている。
この時代に生きる幸せを感じられるのも、温泉を巡る醍醐味といえよう。

中央自動車道・勝沼ICよりJR中央線塩山駅方面へ向かう。線路を越えたら国道140号線を西沢渓谷・秩父方面に向かって20分ほど走ると川浦温泉山県館の大きな看板が見えてくる。途中、ぜひ立ち寄ってみたいのが、国道140号線手前にある恵林寺(えりんじ)だ。ここは夢想国師が開山した、武田信玄公の菩提寺。信玄公が生前に対面でその姿を写させたという等身大の不動明王や、夢想国師の築庭は必見。毎年4月12日には信玄公の供養が行われており、家臣の墓約70基も墓所後塵に並ぶほど由緒ある禅寺だ。

臨済宗 妙心寺派
乾徳山 恵林寺
所在地:山梨県甲府市塩山小屋敷2280番地
TEL:0553-33-4560
拝観時間:8:30~16:30
拝観料:大人300円、小・中・高校生100円
信玄公宝物館:大人500円、高校生400円、小・中学生100円(お得な共通券もあり)
定休日:無休(ただし宝物館は12月~3月までの木曜日)
http://www.erinji.jp/
< PROFILE >
長津佳祐
観光やレジャー、スローライフを中心に編集・撮影・執筆を手がける。ブログ「デュアルライフプレス」
http://blog.duallifepress.com/
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