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この連載で以前、火の国熊本の阿蘇周辺が自然のパワースポットとして外国人観光客に注目を浴びていると伝えました。九州から北海道に目を移せば、北の大地にもパワーに満ちた土地があります。それが屈斜路湖周辺です。

中標津空港からは牧場が両側に続く道を行きます。快適なドライブが楽しめます


「霧の摩周湖」と呼ばれるとおり、取材に行った日も湖面には霧がかかっていました


硫黄山に近付くと文字どおり硫黄臭が漂って。地球の力が感じられる光景です
北海道といえば札幌…となるのは北海道以外に暮らす人たちにとって、ある意味当たり前です。

北海道旅行を企画するときに、大方の人は新千歳空港に飛ぶでしょうし、すすきのに繰り出して、新鮮な魚介類やラーメンに舌鼓というのも定番のおでかけです。

しかし、地球のパワーを感じたいのなら、北海道の東部がおすすめです。この夏、マイカーをフェリーに積んで北海道に渡って東部をめぐる、あるいは女満別や中標津空港に飛んで、そこからレンタカーで東部をめぐる。こんな旅はいかがでしょう。

北海道の東部は大草原とカルデラ湖、そして温泉が点在する地域です。

たとえば、中標津空港に降りたとしましょう。

空港から走り出すと、周囲は街ではありません。牧場が続く広大なエリアです。

酪農の街だけあって牧草地には乳牛が放たれており、なんとも穏やかな光景が続きます。湿度も少なく、まるでヨーロッパの田舎に来たような気分になります。

交通量が少なく、道も走りやすいために、ついついアクセルを踏み過ぎてしまうので注意が必要でしょう。

最初にめざすのは摩周湖です。日本で20番目の面積を有する湖ですが、なんといっても透明度が日本一。世界でもバイカル湖に次いで2位という記録があります。

摩周湖は約7000年前の噴火によってできたカルデラ湖であり、流れ込む河川がないために透明度が高いのです。

パワースポットとして人気が高い阿蘇と同じカルデラ。神秘的で美しい湖は、地球パワーの賜物でした。

川湯温泉にある足湯。若干、温泉の色が白濁りしています


北の大地は天候の移り変わりも激しく、虹がかかる場面もありました


屈斜路湖畔の砂湯のレストハウスで。温泉を使って温めた飲料や玉子を売っていました。飲泉許可を取得しており、温泉も飲めます
摩周湖を後にして、かつては恐竜がいると話題になった屈斜路湖をめざします。

摩周湖から屈斜路湖への道は、カルデラの火山を降りるわけですから、急な下り坂になります。その分、視界が開けるので、フロントガラスの先には屈斜路湖や、湖を囲む山が見えてきます。

屈斜路湖もまた火山噴火によって形成されたカルデラ湖で、カルデラの湖としては日本最大の規模を誇ります。湖沼面積も日本6位。

ところで、摩周湖から屈斜路湖方向を見ると、山肌からもくもくと湯気があがっているのに気づきます。

「アトサヌプリ」はアイヌの言葉で裸の山、硫黄山と名付けられたその山は、無数の噴気孔から湯気がのぼる活火山です。もちろん、噴気孔がある一帯に植物は生えていません。

観光名所になっており駐車場も完備されていますが、硫黄山に近付くと豪快な湯気に圧倒されます。まるで地球の息吹が聞こえてきそうなのです。

カーナビの地図上で硫黄山から屈斜路までラインを描いてみると、その中間には川湯温泉があります。ラインの先には屈斜路湖の砂湯があり、さらにその先には池の湯、和琴温泉と温泉地が点在するのに気づきます。

くっきりと“火山恩恵ライン”が見えるのです。

川湯温泉は数軒のホテル、温泉旅館が軒を並べる温泉地ですが、足湯なども整備されています。

そして、その先の屈斜路湖畔の温泉地は、まさに地球のパワーが感じられる日本有数の場所でした。

砂湯にある足湯。この周囲の砂を掘れば、そこがそのまま湯船に


湖と直結しているような池の湯の露天風呂。底からぶくぶく湯が湧き出しています


和琴温泉の露天風呂。ここも底から湯が湧出している足元自噴天然温泉です
屈斜路湖の周囲にはたくさんの温泉が点在しています。心地のよさそうな温泉宿泊施設も目につきます。
そのなかで、とくに地球のパワーが感じられる温泉をご紹介しましょう。それは砂湯、池の湯の露天風呂、和琴の露天風呂です。

この3つの温泉には共通点があります。それは“足元自噴泉”という点です。

さて、足元自噴泉とはなんでしょう。答えは簡単。湯船の底でお湯が湧いているということです。つまり、温泉が湧き出しているところに湯船を作ったというわけ。

たとえば、和琴温泉の露天風呂は源泉温度が52.5度。北海道の空気で適度に冷やされて、入浴するにはもってこいの温度になります。

温泉に恵まれていても、源泉温度が100度だったら、足元自噴という贅沢はできません。

実は足元自噴泉の浴槽は全国でも数えるほどしかありません。

それが屈斜路湖畔には点在しているのです。

和琴温泉には露天風呂のほかに湖に面して内湯の公衆浴場もあります。この浴槽もまた足元自噴泉!贅沢な加温加水なしの100%温泉なのです。

和琴温泉の露天風呂、公衆浴場、池の湯の露天風呂が脱衣所がある温泉施設なのに対して、砂湯は“手掘り温泉”です。湖畔の砂を掘れば、そこに温泉が湧き出します。自分たちで掘って、特製湯船を作って温泉を楽しむ。そんな自然のままの温泉なのです。

紹介した温泉の入浴に最適な時期は6月から9月上旬。紹介した温泉はすべて入浴無料。

しかし、地元のボランティアの人たちによって清掃などがなされています。利用するときはマナーとルールを守り、ゴミなどを出さない、騒がないなどの配慮が必要です。

地球パワーが実感できる北海道東部、摩周湖と屈斜路湖の旅。夏休みにぜひ!

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●摩周湖、屈斜路湖がある弟子屈町のホームページ
http://www.masyuko.or.jp/index.html
< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
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