春はキャンプを始める季節、キャンプをやってみようという思いが芽生える季節なのだ。その理由はたくさんあるが、今回はベテランキャンパーたちにキャンプを始めるコツを聞いてみた。
「キャンプを始めるならいつが最適?」という質問をよく受ける。筆者の回答はゴールデンウイークなのだが、それは多くのベテランキャンパーでも同様だ。
●先生はお隣に
「ぼく自身、初めてキャンプはゴールデンウイークでした。ゴールデンウイークのキャンプ場は混んでいます。でも、そのぶん先生がたくさんいるということ。説明書をよく読んで臨みました。テントは簡単に設営できたのですが、タープにはそれなりのコツがあります。ペグの打ち込み方や風や雨に強い設定方法があるのですが、初心者は経験値がないので、それがよくわかりません。初めてキャンプのときに、タープの先端部分に雨が溜まり、風でペグが抜けてしまいました。さらにテントの下に雨水が溜まって大騒ぎしたときに、隣のベテランキャンパーが助けてくれました」
(東京都・西田明彦さん 36歳)
●空いているキャンプ場では不安も
「友人に聞いたところ、ゴールデンウイークは人だらけで自然の音が聞こえない。平日がおすすめとアドバイスされ、初めてキャンプを平日に決行しました。ゴールデンウイーク前の平日という設定が悪かったのか、広いオートキャンプ場に私たち1組でした。テントなどの設営はそれなりにできたのですが、夜が怖かった。野営なんて初めての経験ですから。初心者でコツを知らなかったために、夕食の残りを外に出しっ放しにしたからたいへん。夜中には犬の遠吠えに震え、明け方にはカラス(たぶん)が残り物を突っつきに来て、その音がとても不気味。子どもは私にしがみついていました」
(栃木県・高浦理恵さん 43歳)
●子どもたちが仲良くなって迎えるGW
「4月に入学した子どもが1か月もたって、仲良しになるのがゴールデンウイークです。意気投合したパパ・ママと一緒に合同キャンプを企画しました。ともに初心者だったのですが、共同生活をすることで、子どもたちもより以上に仲良くなったし、両親同士も仲良くなりました。子どもが小学生でいる6年間、家族ぐるみのお付き合いができそうです」
(埼玉県・長谷川宗也さん 35歳)
●最初のキャンプは寝心地のいい時期に
「レジャーは最初の印象が大事です。たとえば初めてのスノーボードで、いきなり急斜面に連れていかれイヤな思いをしたら、その人は二度とスノーボードをやりませんよね。キャンプも同じ。バーベキューや自然の中でのビールは誰でも楽しいでしょう。でも、テントで眠れなかったら? そこでゴールデンウイークがおすすめなんです。この時期、テント内は適温で快適です。夏休み中は正直、高原のキャンプ場でもない限り、工夫をしないと暑くて眠れない。冬から春休みまでは寒い。だからこそ、快適に眠れるゴールデンウイークにスタートするのがおすすめなんです」
(愛知県・西井俊之さん 48歳)
新しく何かを始めるときには、「何を用意すればいいか」が課題になる。キャンプは“用具”が多いレジャーのひとつだ。ベテランキャンパーの事始めはどうだったのだろう。
●スポーツ用品店任せの初心者セット
「3人家族だったので小型テント、タープ、それぞれのシュラフ、バーベキュー台、テーブルとイス、アイスボックス、ランタンを用意したのを覚えています。すべてを大型スポーツ用品店のキャンプコーナーに展示してある“初心者おすすめ用品”で揃えました。アウトドアに強いスポーツ店に行けば、店員さんのアドバイスも聞くことができます。現在では例えばスポーツオーソリティがアウトドアの人気ブランド・コールマンと提携してセットで展示しているので、分かりやすいと思います」
(茨城県・佐々木結衣さん 34歳)
●最初は手ぶらで行きました
「テントひとつとっても、パソコンで検索するとさまざまな種類が出てきます。初心者にはどれがいいかなんてわかりません。そこで、キャンプ場を調べてみると、すべてがレンタルできるところがあったのです。そこで、食材と衣類だけ持って出かけました。予約した日は週末だったのでサイトはほぼ満杯でした。私たちがキャンプ場でしたことは、よそのサイトの見学です。さまざまなテント、タープ、これいいなと思える用具がありました。尋ねてみると、みんな親切に説明してくれます。そこでメモしたお気に入りを、帰ってきてからネット通販で購入しました。最初のレンタルキャンプが、私たちにとっては見本市のようなものでした」
(東京都・佐野恵一さん 37歳)
●アウトドア雑誌の評価に注目
「新しい用具を購入するときは、インターネットで調べたり、メーカーからカタログを取り寄せています。ただし、メーカーが作るウェブサイトであり、カタログなので利点しか書いていません。その点、アウトドア雑誌は使用感などをテストしており、独自の採点をしています。それはある意味客観的で参考になります。メーカーのセールスポイントを鵜呑みにするより、経験豊富なアウトドア雑誌編集部の採点などもチェックするといいでしょう」
(京都府・岩森 武さん 44歳)
●自然保護を考えて
「細かいことなのですが、例えば食器洗いの洗剤にも気を配るのが大事です。アウトドア用の洗剤などを持っているかどうかで、キャンパーとしての質が問われます」
(群馬県・工藤綾香さん 29歳)
●AC電源付サイトを確保
「テントやタープ、テーブルなどの基本用具は別として、AC電源付のオートキャンプ場サイトを確保するのがいいでしょう。そうすれば、たとえばオーブントースターや電気炊飯器などが使えます。家の延長で初心者にはいいと思います」
(静岡県・芦澤ほのかさん 28歳)
時期を選び、必要な用具を購入し、混雑時には早めにオートキャンプ場の予約をして始めたキャンプ。
思い切ってキャンプを始めた利点はどこにあったのだろう。
これもまたベテランキャンパーに尋ねてみた。
●子どもの成長がよくわかる
「キャンプ場という家庭とは異なる空間では、自分のことは自分でやる、すべてのことは助け合って行うというルールを徹底させました。そのために、子どもも食事作りや食器洗いなどを手伝ってくれますし、責任感も芽生えます。子どもの成長がはっきりわかるのがキャンプでした」
(神奈川県・小島健太郎さん 42歳)
●キャンプでは女王様になれます(笑)
「うちではゴロゴロしている主人が、キャンプ場ではウソのようによく働いてくれます。運転、設営、食事作り、買い出しなど、子どもを子分のように引き連れてテキパキと。おかげで、わたしにとってキャンプ場はどこよりも心身ともに休める場所になりました」
(埼玉県・高橋祥子さん 43歳)
●40代前半で全国制覇
「20代後半、子どもが4歳になったのを機にキャンプを始めました。最初はテントキャンパーでしたが、子どもの小学校入学を機にキャンピングカーを購入。それからは県内に1泊すればカウントというルールを決めて、43歳のときに全都道府県を制覇しました。阿波踊りに合わせて徳島に行ったり、初日の出を見に瀬戸大橋に行ったり。家族とともにめぐった全国旅行は最高の思い出です」
(埼玉県・奥山良平 52歳)
●一生の宝物です
「子どもの成長に合わせて始めたキャンプでしたが、今では子どもが独立して一緒にキャンプに行く機会はなくなりました。それでも主人とふたり、秘湯めぐりとキャンプ(どちらかというと車中泊)を続けています。若いころ培ったノウハウがあるので、キャンプも車中泊も苦になりません。夫婦ふたりで元気にでかける。こんな休日の過ごし方が一生の財産になりました」
(千葉県・青木宗一さん 59歳)
それぞれのきっかけがあって始めたキャンプでも、それは一生の財産になったようです。
さあ、キャンプを始めるのに最適な季節がきました。キャンプ、始めてみませんか?
●キャンプを始めるのなら、まずはオートキャンプ大百科
http://www.smart-acs.com/topics/007/topics007.php
●キャンプ場について知りたいのならここを
社団法人 日本オート・キャンプ協会
http://www.autocamp.or.jp/
浜口昭宏
雑誌やWEB編集を始めて数年の編集者。超がつくほどのアウトドア初心者だったが、猛勉強をしてそれなりに成長。アウトドアの中で大好きなシチュエーションは、ビールがおいしいBBQ。