前回の越カメラマンの講座では“マイナス補正”を覚えました。今回は反対に“プラス補正”について学びます。プラス補正によって写真はどんなふうに変化するのでしょうか。コツを学んで実践してみましょう。
前回はカメラが算定した露出設定に対して、“マイナス補正”の行い方を解説しました。
今回はその逆で“プラス”に補正する狙いについて解説したいと思います。
「なぜプラスにするのか?」という問いに一言で答えるとすれば、「明るく柔らかい雰囲気にしたいから」ということになります。
早速、プラス補正する意味から解説していきたいと思います。
薄い雲に隠れた太陽をバックにしてウメを狙いました。
背景の強い光の影響で、カメラが算定した露出のままでは、私としては“アンダー”に感じました。
実は、人間の目はとても順応性が高く、逆光でものを見たときでもすぐに明るい雰囲気に調整しています。
カメラも同様で、逆光の陰の明るさをある程度は算定し、適度な明るさにしようとしています。
問題はその明るさが自分の描くイメージと一致しているかどうかです。
仮に暗いと思うのでしたら、露出補正をして明るい雰囲気に仕上げてあげましょう。写真Bがプラス補正をした例です。右側のウメの花が際立ったと思います。
レースのカーテンが掛かっている室内です。
ここで私が露出の基準にしたかったのは、左側の窓の外に透けるカーテンの模様でした。ほかの部分の露出ではなく、自分が“見せたい場所”の明るさが、イメージ通りになるように露出補正を加えることが基本的なポイントになります。
被写体本来の色合いだったり、トーンだったり、被写体に対して忠実な明るさで再現することを撮影ではめざしがちです。
しかし、そこをあえて切り崩し、被写体の形をシンプルに見せたり、ふんわり柔らかな雰囲気作りをしてみましょう。
通常で考えれば、ほぼカメラの算定値である写真Dで充分ということになりますが、あえて+2段分のプラス補正を行い、花のエッジ(輪郭)部分を際立たせた例が写真Eです。
雲天の日は、太陽の光がフラットに拡散され、被写体を均一に照らすにはうって付けですが、雰囲気が損なわれるケースも少なくありません。
写真Fはその例です。カメラの算定値ではやや暗く、せっかくの牧歌的な雰囲気が重苦しい空気で包まれてしまいました。
そこで吹き渡る風が爽やかに感じられるよう、+1段の露出補正を加え、揺れるコスモスの爽やかな印象を作り出しました。
ちょうど、一番見せたい花の部分が白く飛んでしまわないように露出を決めているのがポイントです。
前回の講座で学んだ「ローキー調」に対し、見た目のイメージより明るい写真を「ハイキー調」といいます。写真H、写真Iはハイキー調の例です。
写真Hは屋根の下の暗い部分が明るめになるよう露出補正をプラスに設定。外は完全に明るく飛ばしています。
ここでのポイントも、自分がどこを見せたいかにあります。見せたい部分が引き立つように露出(明るさ)を決め、周辺は雰囲気作り(柔らかな秋の日差しのイメージ)に役立てています。
写真Iは温室で撮影した花の写真です。かなり明るめの写真にすることで、周辺のごちゃごちゃした背景を目立たなくした例で、これもハイキー調写真のメリットのひとつです。
最後に実践例を紹介しましょう。
写真J~Mは室内に置かれたテーブル上の花をポイントに狙った写真です。
写真Jはカメラの算定露出値のままの撮影です。
これに対し写真Kはローキー調に狙うとどうなるかという例で、テーブルの上に写る花の陰がポイントになっています。
一方で写真Lはハイキー調の写真になります。
写真Kでは陰の印象が強いのに対し、写真Lではかなり薄まった印象になっています。窓の外は完全に飛んでいます。
そして最後に、このハイキー調の写真と同じ明るさで、カメラに搭載されている「ファンタジックフォーカス」モードを生かして撮影した写真が写真Mになります。柔らかな日が差し込む、開放的な室内のイメージをめざしました。
☆
写真の明るさ(露出)は、カメラが算定した値が正しいわけではなく、自分が何を引き立たせたいかといった基準で考えることが大切です。
こうした露出決定(自分の意思に基づく明るさの決定)がマスターできれば、作品作りの幅は広がり、撮影が楽しくなってくると思います。
ぜひ挑戦してみてください。
こし のぶゆき
1968年神奈川県生まれ。カメラ専門誌や旅雑誌の撮影・取材を行なう傍ら、「メルヘンステーション」をテーマに全国の駅を撮影し、雑誌などに作品を発表している。公益社団法人日本写真家協会会員、日本旅行写真家協会理事。
日本人はどうやら「100選」という言葉が大好きなようです。
1964年に深田久弥氏が山岳随筆『日本百名山』を発表し、読売文学賞を受賞したのがきっかけかもしれません。
さて、公益財団法人日本城郭協会が平成18年に発表したのが「日本100名城」です。
これは城郭愛好家からの推薦、専門家による選定会議を経て確定したもので、全国からお城が選ばれています。
松本城(長野県)、彦根城(滋賀県)、松江城(鳥取県)などの名城はもちろん、根室半島チャシ跡群、足利氏館(栃木県)といった筆者が知らなかったものまでランクインしていて、なかなか興味深いランキングになっています。
越カメラマンが教えてくれたハイキー調、ローキー調などを工夫しながら美しいお城の姿をとらえてください。
●公益財団法人日本城郭協会「日本100名城」
http://www7a.biglobe.ne.jp/~nihonjokaku/100meijo.html
http://www.keio.co.jp/campaign/photo_contest2015/entry2015.pdf
京王沿線といえば高尾山、深大寺、井の頭公園、京王百草園など撮影ポイントが豊富です。
美しい風景、名所をファインダーにおさめて応募してください。
選ばれた12枚は来年のカレンダーを飾ります。
自分の作品がカレンダーになってさまざまなところに飾られる! 期待度満々のフォトコンテストです。
応募受付期間:~2014年7月22日(火)
賞 品:最優秀賞1作品(京王ギフトカード5万円分、デジタルフォトフレーム)、優秀賞2作品(京王ギフトカード3万円分)、ほかに入賞、京王賞などあり
発 表:2014年10月下旬予定 京王電鉄ホームページにて
編集部が取材で出かけて撮影したたくさんの写真の中から、壁紙向きの写真をプレゼントします。お気に召されたら、壁紙などにお使いください。
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取材時に海や清流、湖などを見ると、なんだかホッとした気分になります。海に囲まれた日本に生まれたせいか、人間はみんな水に原点を見出すからなのかはわかりません。しかし、水のある風景はしばし時と日頃の慌ただしさを忘れさせてくれます。
構成と写真
岩崎幸則
東京都生まれ。雑誌編集などを経てカメラ&ライターになる。現在は旅行雑誌、企業会報誌などに執筆。プロレス観戦が趣味。