黄色、紅葉色…。森や山が色付く秋は絶好の写真旅行シーズンです。しかし、自宅に帰って写真整理をしてみると、あの“感動”は再現されていません。そこで、越カメラマンが紅葉をうまく撮影するプロのコツを教えてくれます。
これから紅葉の時期に突入しますが、皆さんは紅葉の写真をどうやって狙っていますか。
紅葉は色鮮やかで、それだけで目を奪われがちです。その結果、「あれもこれも入れよう」とすると、散漫な写真になってしまいます。
紅葉写真をうまく撮るには3つのポイントがあります。
1:狙いをしっかり定める。
2:できるなら順光より逆光を狙う。
3:黒っぽいもの(陰になる部分)を画面内に取り入れること。
このうち1と2は、さほど難しくありませんが問題は3です。
では、具体例で見ていきましょう。
紅葉をそのまま狙っても(写真A)、色のメリハリが少なく、フラットな印象です。
とくに、このときは光もあたっていないため、この場所に起伏があるようには見えません。
写真Aに対し、少し右側の部分を狙ったのが写真Bになります。
写真Bは、日が当たったことでメリハリがついたのはもちろんですが、谷になった部分の陰(黒っぽいもの)が入ったために明暗のメリハリがつき、画面が引き締まって見えます。また、立体感も引き出され、この部分の起伏が見て取れます。
このように紅葉を狙うとき大切なのは、画面を引き締め、明暗差で紅葉の色を際立たせる黒っぽいものを一緒に狙う技法です。
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ほかにもどのような例があるか見ていきましょう。
写真C・Dは、いずれも鮮やかに色づいたカエデ類を撮影したものです。
写真Cは葉っぱだけを、写真Dは黒っぽい幹も同時に狙いました。
説明するまでもなく一目瞭然だと思いますが、写真Dのほうが写真は引き締まり、紅葉も色鮮やかに見えると思います。
このように、色づいた葉っぱを中心に狙うときは、黒っぽい枝や幹を一緒に入れるとよいでしょう。
とくに雨に濡れたときは木の幹は一層黒っぽくなるので、絶好のシャッターチャンスです。
房総半島の中央部をレトロな列車が走る小湊鐵道。その駅のひとつ、「上総久保駅」には大きなイチョウの木があり、シーズンともなるとたくさんの写真愛好家が集まります。
イチョウの木を引き立たせるには、空では役不足(写真E)です。
背景が日陰で黒く引き締まる写真Fのほうが、イチョウの色が際立ちます。レトロな印象もより引き出されています。
同じ場所で撮影したとしても、どこから狙うかで背景は異なり、写真の印象が大きく変わるという例でもあります。
他にどういったものが画面を引き締めるのでしょうか。その一例が写真Gです。
尾瀬ヶ原などの湿原や湖沼が点在する高原地帯では、湖や池の水面が、紅葉を引き立たせるのに一役買ってくれます。
これも黒っぽいものを画面に取り込む一例です。
湖や池は紅葉を撮る場合に積極的に活用してみたいものだといえます。水面に映る紅葉などは、最高の被写体になってくれるはずです。
黒っぽいものを画面に入れることで、画面が引き締まるのと同時に、明暗差が生まれ、紅葉の色鮮やかさが際立つことがおわかりいただけたかと思います。
そうやって狙った作品が写真Hです。
ある山間で、葉っぱが風に舞っている紅葉を見つけました。ちょうど背後には適度に陰になった崖があり、そこを背景に「紅葉吹雪」を撮ることができました。
「黒っぽいものを探し、一緒に画面に写す!」、今年の紅葉はこれを意識して撮影してみてください。
なお、日陰などを入れる場合は、しっかりと陰になるよう露出調整(露出補正)をお忘れなく!
こし のぶゆき
1968年神奈川県生まれ。カメラ専門誌や旅雑誌の撮影・取材を行なう傍ら、「メルヘンステーション」をテーマに全国の駅を撮影し、雑誌などに作品を発表している。公益社団法人日本写真家協会会員、日本旅行写真家協会理事。
当時は「〇〇百選」と名付けて観光地や名所を選択するのがブームだったのでしょう。そして、それは旅行者にとっても旅先をチョイスするのに役立ちました。
そのひとつに雑誌『旅』が、1989年の9月号で創刊750号を迎えるにあたり、JTBが開催したシンポジウムにおいて、岡田喜秋氏、C・W・ニコル氏、立松和平氏、椎名誠氏らによって選定された「日本の秘境100選」です。
“秘境”というだけに、北海道の知床、礼文島。東北地方では八甲田や白神山地、桧枝岐。関東・甲信越では秋山郷、奥鬼怒、青ヶ島。近畿では十津川郷、熊野古道。九州では五島列島、椎葉の里など、簡単には行けないところが選ばれています。
しかし、それらはいずれも紅葉の美しいところでもあります。
越カメラマンのコツを学んで、ぜひ傑作をものにしてください。
●『日本の秘境100選を取り上げたウェブサイト』
http://ntfree.4.pro.tok2.com/ych1/hikyou100/
http://j100s.com/hikyo.html
「初夏を彩る」 稲見英明さん作品
※応募ホームページより
これからの時期、日光や奥日光に観光に出かける人は多いのではないでしょうか。
今回、ご紹介するフォトコンテストは、「奥日光清流清湖保全協議会(日光市、栃木県ほかで構成)」が主催するものです。
テーマは奥日光の水辺(湯ノ湖、湯川、中禅寺湖など)と、そこに生きる動物や植物です。
応募受付期間:2014年11月30日(日)当日消印有効
部 門:一般の部、ジュニア(中学生以下)の部
賞 品:会長賞(1作品、一般:5万円相当の賞品、ジュニア:2万円相当の賞品)
副会長賞(各2作品)、特別賞、各協賛団体賞など
http://www.pref.tochigi.lg.jp/d03/kouhou/h26photocontest.html
編集部が取材で出かけて撮影したたくさんの写真の中から、壁紙向きの写真をプレゼントします。お気に召されたら、壁紙などにお使いください。
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夏が終わると温泉の季節。暑くて少々バテてしまった身体と心をゆっくり癒したいものです。そこで、今回は温泉の写真を。場所は山陰と九州の温泉地です。“温泉通”なら「あ、ここだ!」とすぐにわかるかもしれませんね。
構成と写真
岩崎幸則
東京都生まれ。雑誌編集などを経てカメラ&ライターになる。現在は旅行雑誌、企業会報誌などに執筆。プロレス観戦が趣味。