“光”は撮影するためにとても重要な要素です。どこに光が当たっているのか、もう少し待つと光が当たる場所が変わるのかなどと、光に気を配って撮影してみましょう。作品がずいぶん変わってくるはずです。毎月恒例のおすすめ写真コンテストも掲載しました!
目の前の光景をそのまま撮影したときに、見た目とは違って暗くてメリハリのない印象になってしまったことがありませんか?
そのひとつの要因として、「シャッターを切ったときに日が当たっていたか」、もしくは「そうではなかったか」という光線の差が考えられます。
「当たり前では?」と思われるかもしれませんが、撮影現場では案外、「日差し」の動きを見落としてしまうものなのです。
これからは、光の具合にもっと注意を払って撮影してみましょう。
ホームの前で、茶色く色づいた麦畑が太陽の光に輝いていました。写真Aは光がやや弱いとき、写真Bは光がもっとも強いときにシャッターを切っています。
光の強さひとつで写真の見た目の印象が、がらりと変わってしまう例です。
とくに薄茶色の麦は光をより強く反射するために、日が強くなればなるほど他の部分以上に輝きが強くなります。
また、見た目にも透明感が増しているのがわかります。
しかし、光が弱くなると全体のメリハリは少なくなってしまい、麦の透明感も失われてしまいました。
これが日差しの有無による写真への影響です。
写真C・Dは晴天の日に、ほぼ同じ場所から撮影したススキの写真です。
写真Cは太陽が一瞬雲に隠れ、ススキが日陰になっていたときに撮影したカット。一方の写真Dは、日が当たっているタイミングで撮影したカットです。
ご覧いただければおわかりのように、全体に太陽の光が廻っている写真Dのほうが爽快な印象です。
日が当たっているかいないかを判断することがいかに重要であるかが、おわかりいただけたと思います。
では、どのような日の当たり方がよいのでしょうか。
連載第39回の紅葉の撮り方のところで、日陰の部分を画面内に取り入れることを解説しました。
つまり、日が差している部分と日が差していない部分が同時にファインダー内にあるということは、写真表現するうえではとても好都合なのです。写真E/Fはその例です。
大切なのはメインとなる被写体に、日が強く当たっているという点です。
ここでは、ススキ原に強く日が当たっている写真Fのほうが、秋の草原らしい雰囲気を表現しています。
こうしたタイミングを待ち、シャッターが切れるようになると、写真表現の幅はどんどんと広がっていくでしょう。
ちなみに、背後の山にだけ日が当たっている写真Eも悪いわけではありません。これから嵐でも来そうなおどろおどろしい雰囲気になっています。
重苦しい雰囲気にするために、あえて脇役にだけ日が当たっている瞬間にシャッターを切るのも、時として効果的な場合があります。
それだけ日の当たり方は大切なのです。
一瞬だけ、しかも一部分だけ日が当たれば、それだけで写真は立体的になります。写真G/Hはそんな例です。
山肌から立ち上る霧(ではなく、箱根の大湧谷に立ち上る「煙」ですが…)。この日は太陽の光が差したり差さなかったりと、ころころと気象条件が変わっていました。
背後の山に日が差さず、煙にだけ日が差した瞬間を狙うと写真Hのように、より立体的な風景が撮影できました。
一方の日が差していない写真Gは、全体的に平面的な印象です。
今回見てきたように、きちんと光が当たっているということは、写真表現のうえでとても重要です。しかも部分的な光は、かえって画面内にメリハリを生み、ドラマティックな写真になるのがおわかりいただけたかと思います。
お芝居などの舞台に照明が必要なように、ライティング(外で撮る場合は太陽の光の当たり方)をいかにコントロールするかが、写真作品を仕上げる場合に必要なのです。
写真Iのように何の変哲もない風景でも、部分的に光りが当たるだけでドラマティックな風景へと変貌します。ある意味、太陽は大地を照らすスポットライトなのです。
この天然のスポットライトを見極めて、よりよい写真を狙ってみましょう。
こし のぶゆき
1968年神奈川県生まれ。カメラ専門誌や旅雑誌の撮影・取材を行なう傍ら、「メルヘンステーション」をテーマに全国の駅を撮影し、雑誌などに作品を発表している。公益社団法人日本写真家協会会員、日本旅行写真家協会理事。
初冬を迎え、日本の里山にも雪が積もりはじめました。
日本に暮らす人々は、北海道や東北、日本海側の地域が雪に覆われる光景は珍しくありません。しかし、“雪”がない国の人々にとって、雪はとても美しく、珍しい光景なのです。
その証拠に、北海道、蔵王などの雪の名所には、シーズン中に中国、台湾、香港、タイなどから多くの観光客が訪れます。
さて、日本の原風景である“里山”が雪に覆われる時期は、寒さは厳しいものの、絶好のシャッターチャンスです。
雪には“見たくないもの”を隠す効果があります。田畑はあぜ道部分が強調され、自販機などの比較的色が派手なものも覆ってしまいます。
越カメラマンがいうように、そこに部分的に光が当たれば、「これぞ日本の原風景」の決定的な写真が撮影できるかもしれません。
『にほんの里100選』は、2008年に候補地を募集し、2000地点以上の応募から朝日新聞と森林文化協会が候補地を絞って選ばれた、まさに日本の里です。
選考委員には映画監督の山田洋次氏や京都大学大学院教授の森本幸裕氏などが名を連ねました(肩書きは当時)。
山田洋次監督は『男はつらいよ』のロケハンやロケで日本の隅々まで出歩いた人。きっと、寅さんが歩いた里山も選ばれているのでは…。
日本の里山が雪に覆われて、より一層美しくなる冬。ぜひ、撮影ドライブにでかけてみてください。
●『にほんの里100選』
http://www.sato100.com/about/
これからの季節でも傑作は“もの”にできます。
※公式ホームページより
http://www.yurutetsucp.com/contest_outline/
新潟県の小出と福島県の会津若松を結ぶローカル鉄道・只見線。途中には鉄道ファンに人気の鉄橋や温泉もあり、十分に旅の楽しさを味あわせてくれる路線です。
鉄道写真家・中井精也氏が推奨する「ゆる鉄目線で、ゆる~い旅を奥会津で!」のもと、フォトコンテストも開催されています。
鉄道写真を撮影するにはマイカーを活用して列車を追い、ときにはパーキングにクルマをとめて乗車というのが筆者の経験上もっとも効率的。これからの季節でも間に合うので、ぜひ、応募してみてください。
応募受付期間:2015年1月1末日 当日消印有効
応募部門:只見線に関わる「ゆる鉄目線」の風景
一般部門とスマホ部門あり
賞 品:
一般部門
グランプリ:奥会津おエア宿泊券(1名)
準グランプリ:奥会津宿泊券(2名)ほか
スマホ部門
グランプリ:iPodまたはSONYウォークマン(1名)
準グランプリ:電子辞書(2名)ほか
編集部が取材で出かけて撮影したたくさんの写真の中から、壁紙向きの写真をプレゼントします。お気に召されたら、壁紙などにお使いください。
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韓国ソウルの繁華街明洞は、いつも大勢の観光客、地元のおしゃれ自慢で賑わっています。店頭や屋台には化粧品やさまざまなおみやげグッズがずらり。どれもピカピカと輝いており、つい買ってしまおうかな、という衝動にかられます。
構成と写真
岩崎幸則
東京都生まれ。雑誌編集などを経てカメラ&ライターになる。現在は旅行雑誌、企業会報誌などに執筆。プロレス観戦が趣味。