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茨城県の笠間、栃木県の益子は首都圏を代表する陶芸の街。窯を持つ作家が集まるだけでなく、来訪者が絵付け体験や陶芸体験できる施設もたくさんあります。ゴールデンウイークには大きな陶芸市が開催されるのが恒例です。


茨城県立陶芸美術館では6月21日まで開館15周年記念「没後20年ルーシー・リー展」を開催


陶芸体験施設が点在、すべてを作るものから絵付け体験まで

母は東京藝術大学を卒業した油絵画家で、80歳を超えた現在でも絵本の挿絵や展覧会に出すための作品を描いている。

同級生にはシルクロードを題材にした日本画で脚光を浴びた平山郁夫氏(故人)がいて、ずいぶん仲がよかったらしい。

母の個展にやって来た平山郁夫さんに会ったこともある。僕は大学を卒業してから2年ほど、シルクロードが通るパキスタンに赴任した経験があるので、平山さんとガンダーラ文化によって発展したパキスタン北部の街について話したのを鮮明に覚えている。

平山さんはシルクロードを何回も旅し、それを日本画に仕上げたが、母もまた旅が好きでスペインや国内のお花畑でスケッチし、それを油絵していた。

そんな母が毎年楽しみにしているのが、ゴールデンウイークに開催される笠間と益子の陶芸市だ。

このふたつの陶芸の街は、県が違ってもクルマで30分ほどの距離なので、1日もしくは2日間をかけて2カ所をめぐる。

美術館で陶芸作品を鑑賞し、テントの下に並べられた数多くの陶器を眺め、ときに購入し、陶芸体験施設で絵付け(本職だけあって母はこれが実にうまい)をする。

もうずいぶん同行していないが、かつて同行したときはまるでマネージャーのように母の付き添いをしたものだ。

「あっちを見たい、こっちを見たい」と張り切る母に振り回されるうちに、僕自身も陶器に引き込まれていった。作家によって異なる形や釉薬の使い方に“おもしろさ”を感じたのである。

とくに陶芸市では安くて実用的な器から、著名な作家の作品までギャラリーをはじめ特設ブースに並ぶので、その違いを見るのも愉快だし、数多くの器はなかなか見応えがある。

笠間の「陶炎祭(ひまつり・今年は4月29日~5月5日)」では窯焼き(陶芸のことです)のプロ(陶芸家)が趣向をこらして、特設の“陶芸家”手作りピザ屋台などを出すので、それもまた楽しみのひとつになった。

おいしいものを食べながら、気ままに陶器を眺め、体験教室で自分だけの茶碗などを作る。

笠間・益子へのおでかけは、とても素敵なゴールデンウイークの恒例行事だった。


笠間で知り合った陶芸家寺本守さんと師の工房


美術館には寺本さんを始め笠間の作家の作品も展示されている

今から5年ほど前になるが、僕は茨城県の広報活動のお手伝いをした。

茨城の観光スポットを旅雑誌に執筆したり、茨城県発行の広報誌の編集にかかわったのだ。

そのときに久々に笠間に出かけた。陶芸市を見るという観光客の視線ではなく、陶芸家たちの内面に触れるのがテーマだった。

久々に訪れた笠間の街はずいぶんと印象が違ったのを覚えている。

小さなギャラリーが並ぶ散策路が整備され、陶芸体験工房やクラフトショップが充実した「笠間工芸の丘」が観光目玉になり、さらに平成12年に開館した「茨城県陶芸美術館」が工芸の丘に隣接して建立されていた。

陶芸美術館では笠間焼の歴史や技法がくわしく理解できるほか、茨城県に所縁のある陶芸家の作品が展示されている。

笠間といえば人間国宝(重要無形文化財保持者)の松井康成、板谷波山といった陶芸の名人を生んだところだ。彼らの名品が並ぶ美術館は迫力十分だ。

取材時には笠間在住の陶芸家たちと一献設ける機会もあったから、多くの陶芸家と親しくなった。なかには工房まで案内してもらったケースもある。

親しくなった陶芸家のひとりに寺本守さんがいた。実は「親しくなる」と気軽にいえないほど師は高い評価を受けている陶芸家だ。

茨城県芸術美術展「板谷波山賞」をはじめ、日本伝統工芸展の入選の常連であり、国内外で多数の賞、個展やグループ展を開いている。

寺本さんの窯は笠間市内の郊外、静かな森の中にあった。

電気窯、ガス窯、登り窯が設置されており、窯を使い分けて作品を生み出している。とくに「銀彩」を施した作品は華やかであり、それでいて和の落ち着きをもつ独特なものだ。

僕は寺本さんの人柄と作品に一度で魅了されてしまった。

母が個展を開くと、必ず購入してくれる“パトロン”と呼べる人がいるが、なんとなくその人の気持ちが理解できた。寺本さんの作品の移り代わりをずっと見続けたいと思ったのだ。


寺本さんの工房。木漏れ日の中でろくろを回す


太切りの常陸秋そば。そばの香りを楽しみながらいただく

笠間へのおでかけは陶芸を楽しむのがいちばん。そして、2番はグルメである。

実は茨城県は“大”がつくほどの農産王国だ。その背景には耕地面積1766平方㎞、県土に占める割合が29%(平成19年)と全国1位な点に関係がある。

メロン、栗、れんこん、ちんげんさい、秋冬はくさい、夏秋なす、夏秋ピーマンなどはどれも収穫高全国1位だ。

それゆえに、笠間へのおでかけの際は、地元の食材を使ったレストランに立ち寄りたい。笠間にも地元食材を取り入れたフレンチレストランがある。

また、笠間では日本三大稲荷のひとつと呼ばれる「笠間稲荷神社」とその参道が旅人を迎えてくれる。「笠間いなり寿司」は、そば、くるみ、舞茸などのさまざまな食材を使用した“変わり種いなり寿司”。こちらもぜひ味わってほしい。

さらに、茨城といえば「常陸秋そば」である。

選抜育成と種子の管理によって磨き上げられた常陸秋そばは、香り、品質ともに優れており、そば通からも好評価され続ける逸品だ。

笠間から常磐自動車道を利用して北上、常陸太田市に行けば、常陸秋そばを振る舞うお店が点在する。

陶芸とグルメを楽しむおでかけ。陶芸市があるゴールデンウイークでなくても、常に楽しめ、陶芸体験ができるのが笠間と益子の魅力だ。



「ランチを作ったから、一緒に食べようよ」と、寺本さんに声をかけられた。工房を見学していたときの話である。

大きな木製テーブルにつくと、大皿に盛られたサラダと、同様に大皿に盛られたペペロンチーノが運ばれてきた。湯気ののぼるパスタのおいしそうなこと…、でも、僕は盛り付けられた大皿に圧倒された。

それは、寺本さん作の40cmもある楕円のみごとなお皿だった。


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●笠間観光協会
http://www.kasama-kankou.jp/index.html
●益子町観光協会
http://mashiko-kankou.org/
●観光いばらき
http://www.ibarakiguide.jp/
< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に共著の『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』、一部執筆&プロデュースの『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」の連載ほか。
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