1. Smart Accessトップ
  2. おでかけマガジン(+バックナンバー)
  3. 地域ならではの経験がしたい!
「Smart Access」おでかけマガジン 毎月2回、「Smart Access」会員のみなさまへ、旬のドライブ&スポット情報をお届けします。
トップページへ戻る

この10年くらい「安心・安全」「地産地消」「地域再発見」などの言葉がずいぶん聞かれるようになりました。発信源は地方自治体で、それぞれの土地の魅力、安全性を知ってほしいと使い出したのです。そして、それはおもしろい“体験”にも繋がっています。





出版社勤務を辞めて会社を立ち上げたとき、最初に行ったのが地方自治体の観光PRの仕事だった。

それぞれの自治体がアピールしたい観光地をぐるりと巡り、実際に目で見て、名産品を舌で確認し、それを記事にしてさまざまな雑誌にページを作る。

また、首都圏にあるカフェをジャックして、まるごと自治体一色の「〇〇カフェ」を開催したこともあった。

代表する観光地の写真を使って窓に貼る大きなポスターやコースターを作る。観光情報やアクセスを掲載したランチョンマットを作る。そして、農産品を使ったパスタなどの特別メニューと、地酒や特産フルーツを使ったカクテルをスペシャル・メニューに加える。

地域の魅力が深くわかる、とても楽しい仕事だ。

この仕事をしていて気付いたことがある。

10年くらい前からだろうか、徐々に「地域」という言葉がクローズアップされるようになった。

首都圏や京阪神、中京などの大都会は別にして、地方は共通の悩みを抱えている。

人が都会に流れ、村は過疎地となる。そのために休耕田や作り手のいなくなった畑が目立つ。国外の安い農産品を仕入れた業者が安価で売るから、国内の農家は採算が合わなくなって、やがて引き継ぎ手がいなくなるという問題もあった。

それだけではない。バイパス沿いにある“全国均一”の大型チェーンにお客を取られて商店街はシャッター街と化す。

こうした多くの問題を内包し、地方の“元気”は失われつつあり、大河ドラマや朝の連続ドラマの舞台になったところや、新交通ルートが完成したところだけが、なんとか観光客を呼び寄せることに成功しているぐらいだった。

「うちの土地の特色はなんだろう?」、「なにが魅了なんだろう?」、限りなく底辺に近い状態を見た地方の人たちは、自分たちの環境を見直し始める。

すると、「あの農家は有機栽培をしているぞ」、「県の農産物研究所では、こんな新種ができたよ」と、全国にアピールできる新しい魅力がたくさんあった事実に関係者は気付く。

そして、生産者の顔が見える「安心・安全」な農作物や、地域の“ブランド物産”が生まれ、生産量が少ない農産物だから地元で消費してしまいますよ、という「地産地消」の言葉が生まれた。

いつしかそれらの言葉でPRされる名産品は、都会の居住者にも魅力的なものになって定着していく。





名産品アピールの流れが徐々に変化してくると、旅人へのアピールにも変化が見え出した。

かつて、日本人の旅の主流は“確認の旅”だった。

テレビの情報番組やガイドブックで見た名所に行き、「あ、これが〇〇ね」、「ここが〇〇ビーチね」と確認すると、それだけで満足する旅のスタイルが主流だった。

しかし、昨今は違う。背景には一定の情報が記載された名所を“見るだけ”では飽き足らない旅人が急増した点にある。

「歴女」「仏女」などの言葉が流行ったように、史跡や仏閣、仏像をただ見るだけでなく、その背景に興味を抱く人々が現れたのだ。

そういった新しい旅のスタイルに地方行政はいち早く対応した。観光地に「ボランティアガイド」を置き、ミニツアーで名所や町の背景をガイドするシステムを構築する。

こうして“掘り下げる旅”が全国で確立していった。

また、産業の現場にも変化が現れた。たとえば、名物の蕎麦を食べさせるだけでなく、蕎麦栽培を体験したり、蕎麦打ちを体験したり、“提供するだけ”だったものに、“体験できる食”の魅力がプラスされ、かつてこんな経験をしたことがなかった都会の人々に好感触を得る。

そうなれば“体験”の幅はぐっと広がる。

地元の人しか行っていなかったような行為が“体験”として観光の目玉になりうることを地方の人々が学んだのだ。

畑仕事、漁業、こんにゃくやだるまなどの名産品の製造、美しい自然を利用したアクティビティも含め、あらゆることが“体験”できる時代になったのだ。

各県の観光情報のホームページを見れば、さまざまな“体験”が検索できる。しかも、一応行政機関のお墨付きだから、料金の面そのほかで比較的安心して参加できる。

これからのおでかけシーズン、行政の観光情報を検索し、その地方ならではの体験教室に参加してみたらいかがだろう。

掲載する雑誌の読者には、そのおもしろさをなるべく臨場感とともに伝えたい。僕がさまざまな県に取材に行って記事を執筆するときの唯一のポリシーだ。

だから、取材スケジュールが押したときでも、温泉があれば必ず入浴した。湯船の撮影だけを済ませて立ち去ることはしなかった。遠回りになっても推薦されたスポットを自分の目で確認した。

羽田空港行の飛行機の搭乗時間が迫っていても、名物の料理を箱に入れてもらい、まだ温かさが残るうちにクルマの中で食した。

体験教室にも、もちろん参加した。それをしなければ、本当のおもしろさはわからない。

そのうちに、地方行政の観光担当者、広聴担当者に勧められて全国で行った体験はすごい数になった。それはどれも貴重で愉快な体験だった。そのなかでも、とくに印象に残るものがある。

掲載順は不同。執筆しながら、なぜか頭に浮かんだものを紹介したい。ただし、詳しい説明はなし。ご自身で行って体感してほしい。

【芦北観光うたせ船 熊本県】
http://www.taiken-kumamoto.jp/programs/detail/57

“海の貴婦人”と呼ばれる帆船に乗って、不知火の海に出る。沖で太刀魚釣りに挑戦した。船上で振る舞われた海の幸は抜群だった。

【常陸秋そば栽培・蕎麦打ち 茨城県】
http://www.ibarakiguide.jp/seasons/sobafes2011-5.html

“常陸秋そば”といえば蕎麦通もうなる名物そば。香りも豊かでうまい。僕はここで栽培・収穫体験から蕎麦打ちまですべてを体験した。

【輪島塗体験 石川県】
http://wajimanavi.lg.jp/www/view/result.jsp?parent_genre=2

輪島塗は全124工程もあり分業制のため、すべてを体験するのは無理。その仕上げ部分の「沈金・蒔絵」を体験。一生ものの器ができた。

【うちわ作り 香川県】
http://www.my-kagawa.jp/corporate/industrial/industrial.php?id=55

香川のうちわは全国シェアの9割を誇る。丸亀城内にある、うちわ工房「竹」でうちわ作りを体験。糊が乾くまでのお城見物も楽しかった。

【稲庭うどん作り 秋田県】
http://www.sato-yoske.co.jp/inaniwa-udon/index.html

伝統の稲庭うどんの製造は、手練りと熟成の繰り返し。その一部を体験。どうしてもグルメ体験が頭に浮かぶのは筆者の欲望ゆえか!?



そのほかにも、こんにゃく作り、煎餅焼き体験なども印象に残るが、これはバックナンバーをチェックしてほしい。

※各関連HPより写真をお借りしています。


「おでかけマガジン」より、みなさまへ読者プレゼント実施中!
< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に共著の『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』、一部執筆&プロデュースの『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」の連載ほか。
  • スポット特集
  • B級グルメ特集
  • オートキャンプ特集
  • レジャー&リゾート特集
  • ロケ地特集
  • 絶景特集
  • 子供といっしょにお出かけ特集
  • 特産品・名産品特集
  • 温泉・スパ特集