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冬になれば空気が澄み、星空の数がぐっと多くなった気分になります。近ごろ、「天体観測」をじっくりしたことがありますか? 調べてみると、星空観察体験施設やツアーは予想以上にたくさんあります。この冬は星空体験をしてみましょう。




これまでの人生でとても印象深い“星空”が4つある。



最初の星空は学生時代だった。晩秋のころ、学校で祭典があってぼくらはそのリーダーの学年だった。

40年ほど前の東京郊外の学校である。十分に星が見られる環境だった。祭典は盛況に終わり、ぼくらは学校に残って後片付けをした。寮がある学校だから、多少時間をかけてもかまわない。丁寧に清掃するほうが大事だった。

午後8時をまわったころだったと思う。ひととおりの掃除が終わり、教室や講堂の灯りを消して戸締りをし、寮に向かって帰る途中、誰かが「ここに寝転がってみろよ!」と声を発した。 そこは“大芝生”と呼ばれるサッカーコート1面分の芝生が生えたエリアだった。

労働の後だけに夜風が気持ちいい。仲間たちが次々に芝生の上に腰をおろし、僕も真似て芝生に寝転がってから、「ふーっ」と一息ついた。

そのとき、真上に満天の星を見たのだ。

清掃中にあたりは暗くなりはじめていたのだが、こんなに星が出ているなんて気付かなかった。

やがて、いくつもの流星が現れた。ぼくらは飽きもせずに流星を眺めていた。

結局、ぼくたちは1時間以上芝生の上に寝転がっていたのだと思う。生涯の友人となる仲間たちとのかけがえのない時間になった。





二度目の星空はパキスタンの山岳地帯フンザ(カリマバード)での夜だ。

23歳のぼくはアラビア湾に面した巨大都市カラチで仕事をしており、現地で知り合った独身商社マンと一緒に北部へ旅に出た。

首都のイスラマバードまで飛行機で飛び、そこからタクシーでフンザに向かう。とはいえ、10分、20分の距離ではない。5時間以上の道程だったと記憶している。レンタカーがないからタクシーに頼らざるをえないのだ。

道中は冷や汗の連続だった。ほとんどが舗装道路ではなく、曲がりくねった山道。ガードレールがない断崖絶壁。落ちたら奈落の底…。

運転手は先が長いものだから、想像を絶する速度で走りたがる。狭い山道でも前を行くトラックを抜こうとする。

ぼくらは「アシュテ(ゆっくり)、アシュテ」をウルドゥ語で連発し、悲鳴をあげながら後部座席にしがみついていた。

フンザは、一説によると西遊記にも出てくる“桃源郷”であるという。たしかにカラコラム山脈山麓の風光明媚な地で桃の花が咲く。東に向かえば中国なのだから、桃源郷説も信憑性が高い。

今がどうかは知らないが、当時はランプが唯一の灯りの小さな村だった。電気やネオンライトの輝く町は100km圏内にはなかったと思う。

ホテルでランプが消されると…真っ暗闇にはならない。星の光で輪郭が浮かぶのだ。標高があるから空気の層も薄いのだろう。星の光が明るいものだと初めて知った。

フンザの星空は生涯見たなかでもっとも美しい「空全体が天の川」的な満天の星だった。



40歳のころだったと思う。知人がスーダンの大使館に勤務しており、「めったに行ける場所じゃないから」と、ぼくはアムステルダム、カイロ経由の超長旅でスーダンの首都ハルツームに降り立った。

ハルツームはウガンダから流れる“白ナイル”とエチオピアから流れる“青ナイル”が合流する場所である。

ナイルはここで水量を増やし、エジプトへと流れて行くのだ。

しかし、ケニアのような草原の国ではない。街もその周囲も荒野の茶色。森などはない。

滞在中のある日、「世界一大きな夕陽を見に行こう」と誘われて、約1時間のドライブに出た。目的地は歩いて登れる標高50mほどの山だ。

その山頂でぼくは初めて360度の地平線を見た。

やがて太陽は地平線に近付いてくる。

その太陽が大きいのだ。高温なスーダンの気象と地形が太陽をレンズ現象で大きく見せる。子どものころ、アニメ『ジャングル大帝』で見た巨大な夕日がそこにあった。

巨大な太陽も時間とともに地平線の向こうに沈んでいく。それを境に反対側の空から星が降りはじめる。

“星が降る”という表現があるが、東京にいるとどうもピンとこない。しかし、スーダンの大地には無数の星が降っていた。



4度目の星空はオーストラリアだ。

サンゴ礁の海が広がるケアンズの郊外で行われる「夜のワイルドツアー」にぼくは参加した。

野性のカンガルー、ワラビー、カモノハシなどを追いかけるツアーで、夜になればテントで食事をしていると、オーストラリア特有のポッサムなどが現れる。

食事が終わると天体ガイドになった。

「見ていないようで、見ているものなんだな」と、ぼくは妙な感覚に陥っていた。

東京にいるときは「どんなかたち?」と、星空について尋ねられても答えることなんかできない。

でも感覚的にオーストラリアの星空と東京の星空が異なるのを察知できるのだ。

北半球と南半球の違いであるのは認識している。日本では見られない南十字星があるのも十分に理解している。

しかし、“知”の部分より本性的なところで、異なる空であるのを察知できるのだ。昔も今も星は道標だ。人は星のかたちを感覚的に保有しているのではないだろうか。

星空を見上げて感じた、このなんとも妙な感覚…それがおもしろかった。


「天体ショー」と呼べる日があるのをご存知だろうか。
これまでも「スーパームーン」「〇〇座流星群」などが話題になったが、天体でなにかが起きる日と思ってもいいだろう。
そこで、これから期待できる夜を探してみた。

◆2015年12月18~24日 こぐま座流星群出現。とくに23日は極大。なんだか素敵なクリスマスになりそう。
◆2016年1月4日 しぶんぎ座流星群の出現。
◆2016年 土星のリングの傾きが最大になる。
◆2016年5月31日 火星が地球に大接近。
これらの星空のショーのほかに、2016年3月9日に全国で部分日食などの天体ショーが期待できる。



また、全国に点在する天文台のなかで「観測体験」が可能なところもある。ドライブででかけられる地域の天文台のホームページをチェックしてみるといいだろう。
例として「県立ぐんま天文台」を取り上げよう。


◆県立ぐんま天文台
http://www.astron.pref.gunma.jp/guidance/obsexp.html

※県立ぐんま天文台の体験ルール
事前に予約すること。利用時間は午後10時まで。望遠鏡やカメラを借りる場合は予約前に望遠鏡操作資格取得講習会に参加すること。観覧料に加えて観察機器等使用料が必要、など。
利用できる機材は赤道儀や30cm反射式望遠鏡など各種。
望遠鏡の後ろにCCDカメラを取り付ければ、さんかく座銀河、干潟星雲、アンドロメダ銀河などの撮影も可能だ。

県立ぐんま天文台の望遠鏡例(ホームページより)



天文台の天体観察体験と同様に、近年人気上昇中なのが「天体観察ツアー」だ。
これらは空気の澄んだ高原や、伊豆七島、沖縄などの離島で行われているケースが目立つ。
そのなかでも、冬ならではの星空観察ツアーをご紹介しよう。


◆北アルプス山麓信濃大町 星空の散歩
http://tabihatsu.jp/program/84837.html

スノーシューやかんじきで夜の雪原を歩き、満天の星空を体験するツアーだ。12月下旬から3月の降雪シーズンに開催予定。
冷えたときにあったかコーヒータイムも設けている。ただし、吹雪時も開催する予定だそうで、そうなると星空体験とは別物になります(笑)。

空気が澄んだ白馬山麓を歩く(ホームページより)

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< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に共著の『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』、一部執筆&プロデュースの『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」の連載ほか。
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