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雪に覆われるとスキーヤーやスノーボーダーが集うスキー場。しかし、春が訪れて雪が融ければ賑わいは一気に失われてしまいます。それでも全国には暑い時期に元気なスキー場があります。緑の季節も人を集めるスキー場での体験をコラムで紹介します。

夏はゆり園となる箱館山(イメージ写真)


訪れた時はユリの手入れの最中だった


リフトの下は満開のユリ


先日、縁あって滋賀県のスキー場を訪れた。すでに雪はきれいさっぱり融けており、そこに雪煙をあげて颯爽と滑るスキーヤーやスノーボーダーの姿はなかった。

出会ったのは肌にフィットしたスポーツウエアを身に着けて、軽量のヘルメットを被ったBMXの愛好家たち。それほどクルマが停まっていない駐車場内にタープを広げ、自転車用の部品や交換用タイヤ、工具を並べ、小さなベースキャンプといった風情を醸し出している。

準備が整えばゴンドラに乗り込んで山上に行き、林間に設けられたコースを猛烈なスピードで下るのだ。彼らにとって“楽に上がれて思いっ切り下れる”スキー場は最高の場所だ。

彼らが集まったのはゴンドラの営業日だったからである。ゴールデンウイークを含め、その前後の数日は山上からの景色を楽しむ遠来の客や、BMX愛好者のために、箱館山スキー場ではゴンドラを運行しているのだ。

ゴールデンウイークのような特別な期間でもないと、とても採算は合わないのだろう。箱館山スキー場のゴンドラ営業はその後に休止するとゴンドラ乗り場の若い男性係員が教えてくれた。

「再開されるのは雪が降ってからですか?」と尋ねると、顔を横に振る。6月24日からサマー営業が始まるのだと笑う。

箱館山スキー場では箱館山ゆり園・コキアパークを6月24日から8月末日まで開園。続いて9月10日から10月10日まで箱館山コキアパーク:秋コキアが開園となる。つまり、グリーンシーズンでもこのスキー場は人を集めているのだ。

BMXライダーに混じってゴンドラで山上に昇ってみた。

眼下にうっすらと霞がかかっているものの琵琶湖が広がり、その向こうには山並みが連なる。湖岸にいる時とは景色が一転する。なかなかみごとな景観である。

コースを下っていくライダーと別れてから、トボトボと人のいないスキー場を歩いてみた。リフトが止まっている。レストハウスは閉ざされ、飲料の自動販売機の電源は切られていた。賑やかな雪の日には想像できない静けさだ。

雪が消えたスキーコースいっぱいに栽培されたユリの株は、高さ30cmほどになっていた。最盛期には250万の花が咲くという。

琵琶湖の眺望を楽しみながら、ユリの株の間の通路を歩いていると、誰もいなかったスキー場でやっと人を見つけた。

動きやすそうな服装で、赤い帽子をかぶって株の手入れをしている。

「これだけ広いとたいへんですね」と、声をかけてみた。

「もちろんたいへんですが、今年は株の成長がいいのです。きっと、大輪のユリが見られると思いますよ」と、作業する手をわずかに止めて、その年輩の男性は言った。

ゴンドラに揺られて山を下りると、ゴンドラ乗り場の若い男性係員が再び迎えてくれた。

「景色、よかったでしょう。スキーシーズンではなくても、スキー場は楽しめるんですよ」と、言う。

僕はたったひとりでユリの株の手入れをしていた男性の話をした。今年の花が楽しみだと笑っていたと言うと、「あ、それ、支配人ですよ」と、係員が言う。

支配人…? こつこつと株の手入れをしていたのはスキー場の支配人だと言うのだ。

ゆり園開催を前に、思いを込めてユリの株の手入れをする支配人。夏のスキー場も楽しそうだぞ、そんな想いが込み上げてきた。

びわ湖バレイスキー場のテラス


蓼科山と白樺湖


夏山リフトを運行しているスキー場は多い。白馬五竜高山植物園にはテレキャビンで楽にアクセス


首都圏以北に住んでいる方ならスキー場といえば信州や上越、東北地方をイメージするだろう。しかし、アクセスがいい箱館山やお隣のびわ湖バレイスキー場といった滋賀県のスキー場をホームゲレンデにしている関西の人は少なくない。

共に琵琶湖に近い山麓からゴンドラやロープウェイで山上にあがると、そこにスキー場が開けているという仕組みだ。

びわ湖バレイでも夏のニュースを聞いた。「日本一の絶景をひとりじめ。」をテーマに、ロープウェイ山頂駅に隣接するテラスが登場するというのだ。

琵琶湖の絶景や東側湖畔の街並みまで望める雄大なテラス。暑い街を抜け出して、ロープウェイで別世界に行くというのは格別だ。

そう、夏のスキー場は特別な世界になりうるのだ。なにしろ、冬になれば雪が積もる場所。高原や山…、そこは涼風が爽やかな場所である。猛暑と予想される暑い日々を忘れさせてくれるに違いない。

このコラムで何度か書いたが、小さい頃の僕は祖父が建てた蓼科の山小屋で夏を過ごしていた。標高1400mぐらいあったと記憶しているから暑さとは無縁。夜は毛布と掛け布団がないと寒いくらいだった。

小学生になると恒例行事ができた。仕事の合間の土・日曜にやって来る父と一緒に、蓼科高原から八子ヶ峰を通って白樺湖までハイキングをするのだ。

親湯温泉から八子ヶ峰までは小学生にはきつい登り坂。しかし、それからは下ったり、登ったりを繰り返して峰々を越えて行く。蓼科山を正面に、360度の眺望は気分がいい。たくさんの高山植物を見つけるのも楽しかった。

当時はまだ「しらかば2in1スキー場」がなかったから、尾根伝いに現在の白樺湖ロイヤルヒルスキー場を経由して白樺湖まで歩く。いくつかの峰を越えて白樺湖が見えてくると、大いに元気が出たものだった。

ご褒美はちゃんと用意されていた。白樺湖を見下ろしながら、ロイヤルヒルスキー場の夏山リフトに乗れるのだ。歩ききった満足感と、リフトという非日常のものに乗れる高揚。充実のひと時だった。

スキーをやらないファミリーだと、リフトに乗る機会はなかなか訪れない。僕もそうだった。中学2年で叔父さんに連れていってもらって初めてスキーを行い、それから夢中になって、気づけばスキー雑誌の編集者になった。

小学時代には雪国に足を踏み入れたことすらなかった。そんな僕だからこそ、夏山でリフトに乗るといった体験と喜びを鮮明に覚えている。

この夏のスキー場体験は、とくにスキーをしないファミリーにとって貴重な経験になるだろう。

ラベンダーが咲き誇るスキー場も素敵


調べてみれば夏山営業を行ったり、自然体験教室、お花畑を開催しているスキー場は全国にある。

ラベンダーといえば昔のドラマの影響もあり、北海道富良野の風物詩と相場が決まっている。しかし、首都圏から近い関越自動車道沼田ICから行くたんばらスキーパークが「たんばらラベンダーパーク」と名称を変え、一面のラベンダーを育てて開放している。

そのほかにも、スキー場という広大な敷地を夏に有効利用しているところはたくさんあるのだ。

ぜひ、ネットで検索して「行ってみたい!」を見つけてほしい。そこでどんな景色が待っているのか、どんな体験ができるのか。夏のスキー場は、きっと期待に応えてくれるはずだ。


「おでかけマガジン」より、みなさまへ読者プレゼント実施中!

●箱館山スキー場
http://www.hakodateyama.com/green/index.php

●びわ湖バレイスキー場
http://www.biwako-valley.com/topics/21975

●信州八ヶ岳 蓼科高原 白樺湖
http://www.shirakabako.com/home.html

●白馬五竜
http://www.hakubaescal.com/shokubutsuen/

●たんばらラベンダーパーク
http://www.tambara.co.jp/lavenderpark/

●夏のスキー場情報「SURF & SNOW」
http://snow.gnavi.co.jp/kougen/

※コラム執筆にあたりホームページより一部写真を借用しています
< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に共著の『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』、一部執筆&プロデュースの『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」の連載ほか。
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