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  3. 豊富な湯量を誇る十津川村の「源泉かけ流し宣言」 奈良・十津川温泉
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奈良県の十津川(とつかわ)村には3つの温泉地があり、十津川温泉郷と呼ばれている。十津川温泉、湯泉地(とうせんじ)温泉、上湯(かみゆ)温泉だ。この十津川村の25の温泉施設は、すべて源泉かけ流し。全国で初めて「源泉かけ流し宣言」をしたというから驚きだ。

庵の湯
●住所:奈良県吉野郡十津川村大字平谷865
●泉質:ナトリウム-炭酸水素塩温泉
●泉温:2号泉53.7度、7号泉71度
●pH:2号泉6.8、7号泉7.2
●湧出量:2号泉610?/分、7号泉290?/分
●日帰り入浴:7:30~21:00(400円)
●休業日:火曜 TEL:0746-64-1100


浴槽の窓を開けると、ダム湖から心地よい風が入ってきた

国道沿いの入口扉から川面に向かって、木造りの階段が続いている

飲泉場もある。手ですくってひと口。ほんのりと塩味を感じるいい湯だ

内湯を出たところにある足湯。男女で待ち合わせしても、これなら湯冷めしない

熊野から国道168号を走ると、二津野大橋の手前にある「十二滝」。水量は少ないが、落差は80mとも100mともあるといわれ、見ごたえがある

十津川名物の柚子で作った「ゆうべし」と熊野の「じゃばらサイダー」。ゆうべしは中をくり抜いた柚子に、そば粉、米粉、味噌、ごま、鰹節を混ぜ合わせたものを詰めて蒸し、寒風で乾燥させた保存食


十津川村を訪れたのは、熊野古道の取材の過程だった。

念願の熊野本宮大社を参拝することができ、時間の余裕ができた取材チームは、ここまで来たらすこし足を延ばしてみようと、国道168号を北上。和歌山県から奈良県へと県境を越えた。

じつはこの県境越えによって、自身の全都道府県制覇が完成。
電車で通過するだけではダメ、と自分を戒め、必ず駅を出て、散策をしたかどうかで決める。
観光してみないことには、その県を訪れたことにならないというのが持論だ。

とにもかくにも、47都道府県のうち、最後まで残ったのが奈良県。
修学旅行のない高校に進学したため、飛鳥という古都をめぐる旅には縁がなかったのだ。だから、十津川村のことはよく覚えている。

熊野本宮大社から、蛇行する熊野川に沿って国道168号を北上していくと、いつしか川は十津川へと名称を変え、二津野(ふたつの)ダムへと到達する。
鬱蒼とした木々が覆っているので運転中は気づくことはないが、右手の断崖絶壁の下の十津川は、大河へと変わっているのだ。

龍神温泉との分岐まで来て、ようやく十津川は姿を現す。赤い橋を渡り、上湯温泉との分岐を過ぎれば、もう十津川村だ。

十津川村は奈良県の南端に位置し、西は和歌山、東は三重に接している。文化圏的には奈良吉野よりも、和歌山熊野の近いのではないだろうか。

村と呼ぶにはあまりにも大きく、面積は672.38平方キロメートル。
意外なことに、日本一大きな村なのだ。
ちなみに、2位は北海道宗谷郡の猿払(さるふつ)村で、589.97平方キロメートル。以下、3位、4位と北海道が続く。

十津川が一望でき、店が何軒か集まっている橋のたもとに、「庵の湯」という日帰り入浴施設があった。近くに村営の駐車場がある。
Uターンして駐車場へクルマを滑り込ませ、温泉グッズ一式を持って、再び川岸へと向かう。

木製の扉の先には、温泉旅館かと見まがうばかりの木造りの階段が設えられていた。階段は川面に向かって延びている。
飲泉や足湯も完備され、しかも源泉かけ流し。
温泉施設としては完璧だ。

驚いたことに、十津川村は、全国で初めて「源泉かけ流し宣言」をしている。
2004年6月28日に、十津川温泉郷の十津川温泉、湯泉地(とうせんじ)温泉、上湯(かみゆ)温泉にある25の温泉施設のすべてにおいて、源泉かけ流し宣言をした。
これは画期的なことだ。

源泉かけ流しとは、厳密にいえば、温泉のお湯を循環して温めたり塩素消毒したりせず、沸かさず、水で薄めず、湧いている温泉だけを浴槽に流し込んで、そのまま自然に任せてあふれさせる状態をいう。

湯量が豊富でなければ、実現するのはむずかしい。
十津川村は、それだけ温泉に恵まれている地だということだ。
階段を降りると休憩所があり、足湯も完備してあった。

湯舟の脇にある窓を開けると、ダム湖を一望でき、心地よい風が入ってきた。

これはいい。
無色透明で、ほとんど無味無臭。ほんの少しだけ、塩味を感じる。
湯舟でゆっくりと体を伸ばし、ドライブで凝り固まった体をほぐす。
平日なので、貸切状態でほかに誰もいないことに、恐縮してしまう。

この地方出身の武士は十津川郷士といって尊王の意識も高く、神武天皇東征の神話の時代から、南北朝時代、幕末にかけてと、時代の節目に名を馳せた武人を排出してきた土地柄だ。

郷里に誇りと愛着があったのだろうな、と、温泉につかりながら、彼らの思いを少しだけ垣間見られたような気がした。

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庵の湯には駐車場がないので、近くの市営駐車場を利用すべき。大阪方面から庵の湯までは、南阪奈自動車道・葛城ICから国道168号に入り、南へまっすぐ。約97㎞、2時間15分。和歌山方面からは阪和自動車道・南紀田辺ICからは国道311号を東へ。国道168号と合流する本宮交差点を左折して熊野本宮大社方面へ。そのまま北上。約73㎞、1時間30分。三重方面からは紀勢自動車道・尾鷲北ICから国道42号を南下。立石南交差点を右折して国道311号に入り、国道169号、国道168号で熊野本宮大社方面へ。約90㎞、1時間45分。
< PROFILE >
長津佳祐
ゴルフや温泉、クルーズ、スローライフを中心に編集・撮影・執筆を手がける。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』を上梓。北海道から九州まで自噴泉の湯船を撮り下ろしで取材した、斬新な切り口の温泉本になっている。
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