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「おでかけマガジン」では、これまでに動物大好きのコンテンツや体験でもさまざまな動物との触れ合いについて掲載してきました。動物たちと過ごす時間は、子どもにとっても大人になっても夢中になれるものです。動物たちとの触れ合いをコラムでお届けします。

アフリカ象より小さなインド象でも2人分の高さがある


川の中を堂々と歩く


象使いが乗っている時は安心だが…


僕が幼いころ、家にいたのはアメリカンコッカースパニエルだった。もともと猟犬だった中型犬だが、両親の育て方が悪かったのだろう、実によく吠えた。確実に近所迷惑だったと思う。

その次はポメラニアンだった。愛くるしい顔をしていたけれど、近所の子どもが抱っこしようとするのを猛烈に嫌がって、暴れて頭から舗装道路に落ちて死んでしまった。その話には後日談がある。近所の子どもが悪いわけでもないのに、その子をなんとなく避けるようになった。きっと、その子は相当悲しい思いをしただろう、小さな犬を可愛がろうとしただけなのに…。

両親はその後もヨークシャテリアなどを飼っていたが、僕は幼少の苦い思い出があるためか、犬を飼うことはなかった。

そのうちにペットブームになり、チワワやトイプードルなどの超小型犬を連れている人を多く見かけるようになった。

でも、僕は“超小型犬は弱いから…”というトラウマ的な感覚があり、可愛いとは思うけれど、なんとなく好きになれないでいる。ましては他の人が飼っている超小型犬を抱っこしようとは思わない。

さて、隣人が連れているのが中型犬のウィペットだ。

この犬がとてもかっこいい。グレーハウンドを祖先犬とするハウンドドッグで、スラリとした容姿をしている。畑を荒らすウサギを追うために作られた犬だけに走る姿が似合うし、ドッグレースでも活躍している。

彼が僕にけっこうなついている。相手が中型犬だと、超小型犬に抱くトラウマが不思議に消え去る。隣のウィペットが可愛くてたまらないのだ。

話を変えよう。近ごろの動物園では当たり前のように“触れ合い”のための広場が設けられており、ウサギや子ヤギ、モルモットなどに触ることができる。

しかし、犬と同じで小さな動物にはそれほど興味が湧かない。やはり、大きな動物と触れ合ってこその醍醐味というものだ。

かつて、パキスタンのアラビア海岸沿いの大都市、カラチに住んでいた時は、休日になるとクリフトンビーチにでかけ、乗馬や乗ラクダを楽しんだものだ。とくに、ラクダは高さがあるぶん、景色が変わって愉快なのだが、ちっとも楽ではない。ラクダは嘘だ。立ち上がる時も大きく前後に傾くし、歩くときもゆっさゆっさと揺れる。でも、大きい動物の醍醐味は十分だ。そんなわけで、「どうせなら陸上で最大の動物」に乗りたいと、タイにでかけたのだった。

象さん、道草中


象と一緒に川遊び


「おでかけマガジン」の動物大好きのコンテンツに掲載した市原ぞうの国は、象の背中に乗る体験ができる楽しい動物園である。ただし、歩くのは象のためのサークル内。いうなれば、乗馬といっても“引き馬”によって狭いフィールドを1周歩くようなものだ。

だが、タイの象乗り体験は違った。

南国タイはマリンスポーツやゴルフなどが観光客に人気だが、象に乗る体験も代表的なアクティビティのひとつ。しかも、狭い場内をぐるりと周回するだけではなかった。

川を渡り、森の中をどすんどすんと突き進む。いろいろな象ツアーがあるが、僕が乗ったのは背中に台を取り付けたタイプだった。

アフリカ象より小さいとはいえ、体重は4000~5000kg、体長5.5~6.4m、肩の高さは3mを超える。乗り場は高さが3mぐらいあり、そこに横付けされた象によいしょと座る。

象使いが「エヤー(こんな感じです)」と声をかけると、象はのそのそ動き出す。やがて、どすんどすんという軽快なリズムになるが、怖いのは下り坂だ。背中が異常に前に傾き、象と一緒に転がり落ちそうな気分になる。握力マックスで背中の四角い鞍にしがみつくのだが、怖がる僕などおかまいなしに、象は前足でしっかり大地を踏み、一歩一歩余裕で坂を下っていく。

坂を下れば川になる。そこもザブザブ通過する。象使いの言葉がわかるらしく、ご機嫌よろしく川を行くのだ。

川を超えれば森の中。傾斜がないので快適だ。が、ここで象使いが象から降りてしまう。 象使いがいなくなった象に乗って森を行く。少々、心細い。

象は気ままだ。すでに歩く道程はわかっているのだろう。勝手に森の中の細道を進む。時には道草をくって樹木に巻き付いた蔦の葉を、鼻を伸ばして取って、口に運び出す。

こうなると僕はなすすべがない。象が歩き出すのを待つだけだ。

象乗り体験はこんな感じだった。象乗りの次は象と一緒の水浴びが待っていた。川の中で象の体をさすったり、象の背中に乗ったり、そして象に水を思いっきりかけられたり…。特別な時間が過ぎていった。


イルカと触れ合える施設も増えた


手に乗る小鳥はなんともかわいい


海岸で乗馬が日本でもできる


象と遊んだ後、僕はとても満たされた気分になった。人間のエゴが多分にあるかもしれないが、現在では多くの動物が友だちになった。

インド象は人との関わりが深く、荷役動物として樹木の運搬などに使用されてきたほか、さまざまな儀式においても活躍している。

とはいえ、森が減少し続ける今日、インド象も絶滅危惧種に指定された。

自然の中で生きにくい状況のインド象だが、人との関わりのなかで、それなりの頭数が生存しているのも事実だ。

そういった動物との関わり体験は、“なごむ”“かわいい”といった感情以外に、さまざまな想いを生むものだ。そして、それは地球という大きな規模で今日を考えるきっかけにもなる。

近年、動物園は単に動物を見せるだけでなく、保護と繁殖という意味でも重要度が増している。そして、多くの人に動物への理解を深めてもらう目的で、「触れ合い」を大事にする新たな展示方法を模索している。

象に乗れるのは稀であっても、象にエサをやれる動物園は多い。また、他の動物であっても同様だ。

水族館でもイルカやシャチなどと触れ合えたり、ヒトデなどに実際に触れる展示をするところが増えている。

蝶や小鳥が放たれたゲージ内に入り、それらを手に乗せることができる施設も多い。

乗馬にしても引き馬だけでなく海岸や森の中、草原を行くツアーを実施するケースが珍しくない。

小さい頃、僕は両親に連れられて蓼科の山小屋で夏休みを過ごしていたが、ひと夏に1回だけ引き馬乗馬に乗るのが許された。麦わら帽子をかぶったおじさんが引く馬に乗る30分ほどの乗馬だ。

だから、カラチで自由に馬に乗れた時に、初めて乗馬のおもしろさを知った。

それから何年も経った今、北海道のニセコや湘南・三浦海岸、阿蘇で引き馬ではない乗馬を体験し、改めて乗馬のおもしろさを味わった。

国内のさまざまな施設で、動物たちとじっくり触れ合う機会が設けられているのだ。

これからの観光シーズン、大きな動物たちと触れ合うのを目的にでかけてみたらいかがだろう。

「おでかけマガジン」より、みなさまへ読者プレゼント実施中!

●市原ぞうの国
http://www.zounokuni.com/

●日本動物園水族館協会
http://www.jaza.jp/

●ホーストレッキングファーム三浦海岸
http://beachriding.jp/
< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に共著の『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』、一部執筆&プロデュースの『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」の連載ほか。
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