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近年、玩具といえば「ゲーム」が主流で、家の中だけでなく屋外でも興じる子どもや大人が目立ちます。しかし、日本には各地に伝わってきたほのぼのとした郷土玩具があります。福島県の会津で「赤ベこ」に絵付け体験をしました。

茅葺きの屋根が珍しい湯野上温泉駅


重要伝統的建造物群の指定を受けた大内宿


赤ベこの絵付けに挑戦


全国を旅していると、それぞれの地でさまざまな郷土玩具や縁起物に出合うものだ。

たとえば、群馬県高崎の郊外では「だるま」を作る職人に出会った。彼は熟練の腕で大小のだるまの顔を描いていく。一つひとつが同じようでありながら、微妙に異なる表情を浮かべているのが興味深かった。

岐阜県の飛騨地方で作られている人形は「さるぼぼ」だ。サルの赤ん坊を表しているという説が強いが、子宝、安産のお守りとして地域に伝わっている。

沖縄へ行けば各戸の門の上に「シーサー」を見ることができる。中国から獅子文化が伝わったのが起源と言われているが、守り神としての信頼は高い。

これらは縁起のよさで知られるが、郷土玩具としての色合いも濃いように思えるのだ。

「赤べこ」は福島県会津地方に伝わる郷土玩具である。しかし、“幸運の赤牛”としての意味合いも強い。

遡ること約400年。1611年に発生した大地震は仙台や福島に甚大な被害を与えた。会津の寺・虚空蔵堂も倒壊するのだが、数年後には再建工事が始まる。再建用の大材は只見川上流の村から寄進された。しかし、只見川沿岸から巌上に大材を運ぶのは難儀だった。

その時に赤毛の牛の群れが現れ、木材を運ぶのを手伝ったという。以来、会津では赤毛牛に感謝を込めて「赤べこ」と呼び、忍耐強く、力持ちで、幸運を呼ぶものとして親しまれるようになった。

会津鉄道会津線の湯野上温泉駅は、茅葺き屋根の駅舎として鉄道マニア以外にも人気の駅だ。そこから6kmのところに会津城下と日光を結ぶ130kmの街道の、会津城下から3番目の宿場だった「大内宿」がある。

1640年ごろに整備された宿場は、昔の風情を残す場所として観光客に注目を浴びる。そのなかに赤ベこの絵付け体験を実施しているお店があった。

首を押さえて塗る作業がたいへん


徐々に特製赤べこが仕上がっていく


赤ベこの絵付け体験を実施しているのは、大内宿のみなとがわ屋だった。約15cmの赤べこが一つ1100円で絵付け体験できる。

ふと、すぐそばのおみやげ店で販売している赤べこの値段を思い出した。あまり料金は変わらない。それならば、自分で絵付けをしたほうが“正統派”ではないが楽しいに違いない。

目の前に差し出された赤べこは、全体が赤く塗られていた。つまり、僕らが塗るのは“模様”というわけだ。

水性のアクリル絵の具は、白、黄色、赤、黒、金色、青の6色。これらをそのまま塗ってもいいし、混ぜたり水で薄めたりしてピンク色などを作ってもいい。要は自由だ。

過去の参加者の作品を写真で見ても、桜吹雪が舞っていたり、まるで豚のようだったり、ちょっとどうかなと思うドラえもんスタイルだったり、装いはまちまちである。

僕は目をウインクさせるところから始めた。縁起物がウインクしていればなお運気がアップしそうだからだ。

友人は目の上にマスカラ風な装飾を施して、赤ベこ女子に仕上げるらしい。

ああでもない、こうでもないと言っているうちに、徐々に模様がついてくる。ただ、赤べこは首を振るから、そこが固定されなくて難しい。首を固定しようとして、体部に塗ったアクリル絵の具に触ってしまうのだ。

触ってしまえば色が落ちる。そこで、またやり直し。その繰り返しだ。

それでも、友人と楽しみながら絵付け体験が終わった。係員が奥に持っていってドライヤーで絵の具を乾かしてから、箱に入れてくれる。

その姿はやはり郷土玩具ではない。縁起物として飾っておくべきものだった。


旅仲間との会話が弾む時間


イワナやお餅を買い食い


名物のネギ蕎麦。ネギで蕎麦をすする


絵付けを終えてからは宿場を散策する。全長500mほどの往還の両側に茅葺きの大きな民家が並ぶ。水路も整備されており、今日では観光客のためのビールやラムネが冷やされている。

周囲は山と田畑であるから、その中にまるで映画のセットのように宿場があるのがどことなく不思議だ。

現在では宿場町というよりおみやげ店が並ぶテーマパークといった塩梅だが、売られているものは会津や郷土色の強いものが多い。

地元で作った日本酒を試飲させている酒蔵。店頭に設けた火鉢でイワナや餅を焼いているお店など、食べてみたいものが並ぶ。

名物は蕎麦だ。とくに「ねぎ蕎麦(高遠そばとも呼ぶ)」と呼ばれる蕎麦がおもしろい。

お箸を使わずに、長ネギを使って蕎麦を食べる。蕎麦と一緒にネギも食べる。口の中で蕎麦とネギの風味が交わって、独特の味わいとなる。

地方へでかける楽しさの一つは確実に食にある。都会(首都)ではお目に掛かれない独特の食材、食べ方を知ることは喜びだ。

大内宿のねぎ蕎麦にも独特の魅力がある。

ついでに書くなら、その地方の食に合う地酒を探すのも楽しい。会津の旅ではいくつもの酒屋をまわった。会津で求めたい日本酒があったからだ。その一つは福島県河沼郡会津坂下町の廣木酒造が出す「飛露喜」。もう一つは会津若松市の宮泉銘醸が出す「寫楽」。これらは通販サイトでも買えるが料金が高い。

地元で探すのがもっとも効率的だし、地元の酒屋との会話は旅を楽しくするのだ。

結局、飛露喜は購入できなかったが、それでも寫楽は手に入れることができた。

さて、冒頭に書いたように地方には多くの縁起物や郷土玩具がある。そして、今やさまざまなところで絵付け体験などを実施している。これらに興じるのも旅を思い出深いものにするコツだと思うのだ。

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< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に共著の『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』、一部執筆&プロデュースの『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」の連載ほか。
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