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たとえ鉄道マニアでなくても、観光地を走る鉄道や、少々珍しい客車に乗ったりするとウキウキするものです。「トロッコ列車」が活躍する観光地が近年、脚光を浴びています。絶景の中をのんびり走るトロッコ列車、ぜひ搭乗してみませんか?

一つの駅に一つの漁村。チンクエ・テッレの漁村


客車を先頭にトロッコ亀岡駅に列車がやって来た


開放的なトロッコ車はすぐに満席に


これまでの人生で、ずいぶんたくさんの列車に乗っている。そのなかでも、印象深い列車がある。

スイスはマッターホルンの麓、ツェルマットの村に行く「氷河特急」は、スイスアルプスの山々を眺めながら走り、深い谷を大きな陸橋で越えて行く。しかし、あのマッターホルンはなかなか見えないのだ。いよいよツェルマットに到着という寸前になって、やっと車窓にマッターホルンが浮かびあがる。その待ちかねた感がたまらない。よくぞ、この景色に導いてくれたと列車に感謝したくなったほどだ。

昨年11月、イタリア西部のリグーリア海岸沿いにある「チンクレ・テッレ」と呼ばれる村々を列車でまわった。チンクエ・テッレとは、「5つの土地」という意味だ。鉄道の駅に着くたびに小さな海沿いの街が5つ連続で現れる。

一つの駅に一つの小さな漁村。それぞれの港町には共通してカラフルな民家があるのだが、自然の岩礁などによって漁村のかたちは異なる。駅を降りるたびに現れる素敵なおとぎの村。それは、それは楽しい列車旅になった。

さて、日本にも豪華な寝台列車が登場し、驚くほどの料金設定でも待ち人が絶えないという。それはそれで「鉄道旅」の新しいカタチだと思う。

しかし、このコラムの読者なら、クルマを有効に活用して絶景の列車旅をしたいものだ。

そこで注目したいのが、新しい観光事業として行政機関などに注目され、観光客の脚光を浴びているトロッコ列車の旅だ。

日本の各地でトロッコスタイルの列車を運行する鉄道が増えつつある。そして、どのトロッコ列車も走行距離はあまり長くない。

駅のそばの駐車場にクルマを停め、そこから先はトロッコ列車の景観と愉快さを味わい、再びクルマで移動するといった方法なら、簡単にトロッコ列車の旅ができるだろう。

僕が体験したのは、京都の嵯峨野を走る嵯峨野トロッコ列車だ。渡月橋、嵐山といった大観光地にクルマで乗り入れるのは避け、トロッコ列車のもう一つの終着駅であるトロッコ亀岡駅(JR馬堀駅のそば)に向かい、そこのコインパーキングを利用してトロッコ列車の旅をした。

川下りでも人気の保津川に沿って走るトロッコ列車。大勢の観光客と一緒に列車での“川下り”が始まった。

トロッコ亀岡駅から出発すると機関車が先頭になる


基本的に指定座席なので快適だ


保津峡の景色に見入るひととき


京都は世界の観光地の中でも上位に入るところ。アメリカの大手旅行雑誌に2016年ランキングでは6位、2014年と15年は1位に輝いている。

それだけに、訪れる外国人観光客は多い。トロッコ亀岡駅のホームにも観光バスで到着した中国人、韓国人、個人で旅行しているというアメリカ人、フランス人たちが大勢いて、記念撮影に時間を費やしていた。

やがて、トロッコ嵯峨駅を出発し、トロッコ嵐山駅、トロッコ保津峡駅を通ったトロッコ列車がトロッコ亀岡駅に姿を現した。客車を先頭に、ディーゼル機関車が後ろから押しての入線だ。

編成はディーゼル機関車とアールデコ調のレトロな客車。うちの1両は窓ガラスのないオープン車両になっていて、晴れた日には指定座席があっという間に売り切れてしまう。

雨模様ではなかったのでオープン車両を希望したのだが、残念ながら1時間後に出発する列車のオーブン車両座席はとっくに売り切れだった。

この路線はもともと荷物輸送用である。トラックや通常の大型列車が入れない場所にレールを敷き、荷物を運ぶために敷かれたものだ。

保津峡に沿って敷かれた線路は全長7.3km。そこを時速約25kmで、ゆっくりとトロッコ列車は走る。

トロッコ亀岡駅を出発したトロッコ列車は、左手に保津川を見ながら進む。ならば、左側の席を取るべきだと考えるのは早計で、途中のトロッコ保津峡駅から先は鉄橋を渡って左右が逆転。今度は右手に保津峡を見ながら進む。

トンネルも数か所あり、暗がりの中ではレトロ感満載のライトが印象的に浮かび上がる。

JR山陰線の複線化に伴って未使用となった線路を観光目的(といっても、当時は保津峡がそれほどの観光地ではなかった)としようと計画したのが1990年のこと。放置された線路や路肩を整備し、1年後の1991年4月27日にトロッコ列車1号車が出発する。

これは、社長を含めたたった9名のスタッフの尽力の賜物だった。そして、「年間23万人」の集客目標をはるかに上回る69万人の観光客を初年度に集める。

2013年度には100万人を超える観光客を迎え、今や京都の新しい魅力にまで成長したのである。

むずかしいことはさておき、トロッコ列車から見る景観は素晴らしい。

春の新緑、夏の深緑、そして紅葉の秋。薄雪の冬。

四季の中をトロッコ列車は走るのだ。


窓付き車両の電気はレトロ感たっぷり


トロッコ嵐山駅から「竹林の道」は近い


嵐山はお店も多く、人力車が大活躍


渡月橋がかかる嵐山周辺は京都の人気観光スポットだ。ぼくらはとろっこ嵐山で下車し、そこから竹林の道を通って嵐山に出た。

嵐山は数多くの人力車が走り、レンタル着物に着替えた女性たちが散策しており、華やかな雰囲気だ。

メイン道路の両側にはおみやげ店や名物の湯豆腐のお店が並ぶ。

僕らも急ぐ旅ではない。路地を入った静かな湯豆腐のお店の座敷にあがり、湯豆腐のランチをゆっくり堪能した。

それからは渡月橋をぶらりと歩き、トロッコ嵯峨野駅へ。

事前に指定座席は購入していたから、今度はほとんど待たずに予定のトロッコ列車に乗り、JR馬堀駅のすぐ近くに停めてあるクルマへと戻った。

クルマ旅とトロッコ列車を合わせたおでかけ。爽快なドライブになったのは言うまでもない。

   ☆

【日本で楽しめるトロッコ列車】
運行日が限られているところもあるが、日本の各地で観光トロッコ列車が走っている(運休の場合もあるので、搭乗希望の場合は最新情報をチェックください)。たとえば、JR北海道が運営する釧網本線「くしろ湿原ノロッコ号」や富良野線「富良野・美瑛ノロッコ号」などをはじめ、JR四国が運行する予土線の「しまんトロッコ」などがある。そのうちで、比較的搭乗するチャンスの多いトロッコ列車を紹介しよう。

●嵯峨野トロッコ列車(京都)
http://sagano-kanko.co.jp/index.php
今回、搭乗したトロッコ列車。
「トロッコ嵯峨駅」から「トロッコ亀岡駅」間の約7.3kmを25分間で結ぶ。

●小湊鐡道里山トロッコ(千葉)
http://www.kominato.co.jp/satoyamatorocco/#about
首都圏から行きやすいトロッコ列車。SL型のクリーンエンジンで動く機関車を先頭に、ガラスのない展望車と窓付き車両を連結。「上総牛久駅」から「養老溪谷駅」間を約1時間かけて走る。クルマおでかけ派にうれしいのは、上総牛久、里見、養老渓谷駅に駐車場があることだ。

●わたらせ渓谷鐡道(群馬)
http://www.watetsu.com/torokko.html
2種類のトロッコ列車が「桐生駅」と「間藤駅」間を約1時間40分かけてのんびりと走る。運転日は週末が中心だ。

●黒部渓谷トロッコ電車(富山)
http://www.kurotetu.co.jp/
「宇奈月駅」から「欅平駅」までの約20.1kmは橋とトンネル、そして絶景の連続。ただし、オープンタイプの普通車は冬季はほとんど連結されない。

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< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に共著の『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』、一部執筆&プロデュースの『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」の連載ほか。
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