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古代から富士山は山岳信仰の対象として参拝されてきました。さらに、日本の景観の象徴として浮世絵をはじめさまざまな絵画に描かれています。世界文化遺産の構成資産のひとつである三保松原を訪れました。

三保松原からは波越しに富士山を眺められます(写真提供:静岡県観光協会)


三保松原にある「羽衣の松」


羽衣の松のすぐ近くにある羽車神社は御穂神社の離宮


富士山が2013年に世界遺産に登録された時に、少々驚かれた方がいるのではないでしょうか。

なぜならば、世界「文化」遺産としての登録だったからです。

1993年に登録された屋久島と白神山地、2005年の知床、2011年の小笠原は世界「自然」遺産として登録されています。

富士山だって日本の自然を象徴する存在ですから、世界自然遺産でよいのではと思ったのは私だけでしょうか。しかし、そうはならなかったのです。

富士山には大勢の登山客がいて、「ゴミ処理問題」や「し尿処理問題」がクリアできないから自然遺産にはならないと、解説している新聞などもありました。

また、富士山を世界自然遺産に登録しようと活動していた団体の解散や、地元観光業者と自然保護団体の利害が一致しないという説もありました。

そのほかにも諸説ありましたが、結果的に富士山は自然遺産ではなく、文化遺産での登録となりました。

登録名は「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」です。つまり、古くから山岳信仰の対象であったこと、芸術に広く取り上げられていることなどが「文化」であると認識されました。

世界文化遺産の「富士山」には構成資産があります。構成資産とは、文字通り、世界文化遺産を構成する要素です。

世界文化遺産の「富士山」には、25もの構成資産があります。

その一つの「富士山域」は山頂の信仰遺跡、登山道、北口本宮富士浅間神社、西湖、精進湖、本栖湖などを指します。

そのほかには「富士山本宮浅間大社」などの神社、忍野八海の池、御師住宅などが構成資産になっています。

そして、三保松原(みほのまつばら)も構成資産です。これら25の構成資産は、富士山を中心にぐるりとその周囲に点在しています。三保松原はそれらの中で、もっとも西南に位置する構成資産です。富士山から45kmも離れていますが、松原越しに見る富士山の姿は美しく、多くの文学作品や絵画に描かれてきました。そして、信仰に関わる伝説も残っています。

三保の海岸と対岸の伊豆半島


松並木に包まれた「神の道」


今川、武田、豊臣、徳川といった戦国武将にも崇敬された御穂神社


三保に白龍(はくりょう)という漁師がいました。この日も同じように三保で釣をしていると、いい香りが漂ってきました。

その香りに誘われて松原を歩いて行くと、1本の松に見たことがない美しい衣が掛かっていました。

それを持ち去ろうとしたところ、木の陰から美しい天女が現れ、「それは私のものです。羽衣がないと天に帰れません」と言うではありませんか。

「返しますから舞を見せてくれませんか?」と白龍は言いました。

すると、天女は「羽衣がなくては舞えません」と答えます。

「先に返したら、そのまま帰ってしまうのではないか…」と白龍はためらっていました。

すると、天女が言いました。「疑いや偽りは人間の世界でのこと。天上の世界にはありません」

白龍は疑った自分が恥ずかしくなって羽衣を返しました。

羽衣を受け取った天女はやがて舞いはじめました。すると、笛や鼓の音がどこからともなく聞こえ、それに乗って天女は富士山の高嶺から天上へと戻っていきました。



これが羽衣伝説です。

実は、羽衣伝説は日本各地に伝わっていますが、15世紀に作られたと伝わる謡曲「羽衣」によって、三保の羽衣伝説は広く知られるまでになりました。

三保松原は7kmの海岸線に、約3万本の松が生い茂っています。その中の1本が「羽衣の松」として残っています。

羽衣の松には、もうひとつの伝説があります。天女が羽衣をかけただけではなく、この松に神が降りてきたというものです。羽衣の松を依代(よりしろ・神霊が招き寄せられるもの)にして御穂神社を訪ねる神様が降臨したという伝説があります。

降臨した神は、海岸から「神の道」と呼ばれる全長500m、樹齢200~400年の松並木がある道を通って御穂神社を訪ねたのです。

三保松原、羽衣の松、神の道、御穂神社は巨大な松によって独特の景観を作り出しています。

そこを訪れると、なんともいえない神聖な気持ちになります。まして、晴天の日で波越しに富士山が見えたなら、気分はもっとよくなるでしょう。
ちなみに、私が訪れた日は、富士山は残念ながら雲の中でした。


安産を祈願するための穴が開いた柄杓


港に隣接する清水エスパルスドリームプラザ


道の駅の売店は富士山グッズでいっぱい


御穂神社の祭神は大己貴命(おおあなむちのみこと)、別名・三穂津彦命(みほつひこのみこと)と、三穂津姫命(みほつひめのみこと)です。

創建の年は不明で、出雲国の御穂埼から遷座したなどの諸説があります。

「神の道」の伝説でもわかるとおり、御穂神社は海の向こうの常世国(とこよのくに、海の彼方にある別世界)から神を迎える神社であったとも伝わっています。

創建以来、時の朝廷や源氏、戦国武将に信仰されました。とくに徳川幕府は慶長年間(1596~1615年)に壮大な社殿群を寄進しています。

その後、1668年に落雷のために焼失し、現在の社殿は仮宮として建てられたものです。

それにしても、約350年間も仮宮のままというのもすごい気がします。

摂末社は子安神社、磯前神社、稲荷神社などがあります。

恋愛・結婚、安産と子育て、家内安全や出世のご利益があるとされ、神の道、羽衣の松とともにパワースポットとして人気を得ています。

安産を願う人々が残した、穴が開いた多くの柄杓が印象的でした。

さて、三保松原や御穂神社へ行くためには清水の街を抜けていきます。参拝後は清水の街の散策もおもしろいはずです。

サッカーが好きなら、清水エスパルスドリームプラザはいかがでしょう。清水港に隣接する総合施設で、冬はイルミネーションがきれい。

ショッピング、グルメ、観覧車などが楽しめますが、サッカー好きならサッカーショップへ。清水エスパルスのグッズ、日本代表グッズなどが揃っています。

サッカーより食欲というのであれば、プラザ内の「清水すし横丁」が見逃せません。10店のすし屋さんが軒を連ねるおすしの横丁。どこに入ろうかと迷うこと必至です。

また、クルマでおでかけした時に立ち寄りたいのが道の駅などの地域の物産店です。そこには、富士山に関連のあるグッズが大量に並んでいます。

世界文化遺産の富士山が、地域にいかに恩恵を与えているかがわかるほどです。

今回は構成資産の一つである三保松原と御穂神社を紹介しましたが、浅間神社などのほかの構成資産も人気のパワースポットです。順次、訪れてみるのもいいかもしれませんね。

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< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
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