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「泣く子はいねがー」「親の言うこど、聞がねー子はいねがー」。ニュース番組などで子どもを泣かす鬼の姿をした“なまはげ”をよく見ます。でも本当は、なまはげは“幸運の使い”であるのをご存じでしたか?

男鹿半島のほぼ中央部にある「なまはげ館」


室内に展示された各地のなまはげ


よく見れば異なる顔をしています


なまはげと言われると、どんな顔、姿を想像するでしょうか。

赤い顔をした鬼と青い顔をした鬼。ワラで作った衣装を身につけ、手には包丁を持って暴れ回る、そんなイメージでしょうか。

年始に盛んに流されるニュース番組では、自宅に突然訪れたなまはげが悪い子を探し、その姿におびえた子どもたちが逃げ回る姿が流されます。

実は、なまはげは、どれも同じ顔をしているのではありません。

秋田県の男鹿半島のほぼ中央部にある「なまはげ館」には、男鹿市内各地のなまはげのお面が150枚展示されています。

それらは青鬼・赤鬼のような面もあれば、緑の面、白い面、木製の茶色の面など色もさまざま。角の大きさもそれぞれです。

材質にしても木の皮を用いたもの、木彫り、ザルに紙を貼ったもの、近代ではアルミ製やプラスチック製まであります。

共通するのは、お面をかぶること、「ケデ」と呼ばれるワラ製の衣装を身につけること。「ハバキ」と呼ばれるワラで編んだスネあてを着用すること。ワラ靴を履くこと。そして、出刃包丁と御幣(ごへい)という神のしるしを付けた杖を持つことでしょうか。

なまはげ館に150ものお面があるのは、男鹿市内だけでもそれだけの集落があり、集落ごとに異なる伝統的ななまはげがいるからです。

なまはげ館に並んだ、それぞれのなまはげを見学すれば、微妙に異なる表情に見入ってしまいます。

非常にユーモラスなお面もありますが、全体的には昔話の挿絵で見るような“鬼”に似ています。

このお面をつけたなまはげが、「悪い子はいねがー」と叫びながら、家に入ってきたら、子どもにとってはとても怖いでしょう。

ニュース映像で子どもが泣きじゃくっているのも理解できます。

「あればかりが映像でピックアップされてしまっています。本当は幸せを願うのがなまはげなのですよ」という話をなまはげ館で聞きました。

なまはげ館では面作りの実演も見られる


漢の武帝と五匹のコウモリ伝説が残る赤神神社五社堂


男鹿半島の美しい夕日


かつては小正月の日に、現在では大晦日になまはげは家にやって来ます。

目的は子どもを脅すわけではありません。「ナモミ」をはぎにやって来るのです。

さて、ナモミとは何でしょう。

男鹿半島の冬は厳しい寒さになりますから、囲炉裏で暖を取りたくなるものです。

囲炉裏に長くあたっていると、やがて手足に火型(火斑)ができます。これを男鹿地方などの方言で「ナモミ」と呼びます。

つまり、働き者にはナモミはできませんが、囲炉裏や火鉢にあたってばかりいる怠け者にナモミができるというわけです。

そこで、なまはげの出番です。

「来年はもっとよく働くように」、「精進するように」と、なまはげは怠け者をいさめにやって来るのです。つまり、子どもだけでなく、すべての怠け者を注意しに来るというわけです。ただし、ナモミはぎの対象となるのは子どもや初嫁といった新しい家族が主だったために、あのニュース映像の場面が広く全国に報道されるようになりました。

なまはげの語源には、「ナモミはぎ」という説もあるほどです。

さて、このなまはげに関する記録は江戸時代のものが最も古いそうです。

「あれ、けっこう歴史が浅い」と思ってしまったのは私だけでしょうか。地域の伝統行事をこれまでにも何回か取材しましたが、起源は平安時代だったり、日本神話だったりという行事もありました。それに比べると、江戸時代以前にあったのかもしれませんが、文書に残るものが江戸時代であるのは新しく感じてしまいます。

なまはげの起源も諸説あるのですが、「漢の武帝説」(漢王朝は前後合わせると紀元前206年から220年)、「真山の修験者説」、「山の神説」そして「漂流異邦人説」まであるのです。

これらを見れば、地域に息づいた文化であっても、起源などがあまり明確ではないことがわかります。


男鹿水族館GAOの日本海の展示


一生仲良くできるかもの「ペンギン社」


前述したように、なまはげの起源には諸説あります。漢の武帝説は男鹿半島に伝わる「九百九十九段の石段」(実際に昔話の舞台となった赤神神社には「漢の武帝に桃を捧げる図」などが残るほか、五社堂に続く長い石段があります)を検索して読んでみてください。

そのほかの説も修験者や漂流者が鬼に見えたこと、さらに海に浮かぶ男鹿半島が山のように見えることから来る山岳信仰なども背景にあると思われます。

地域によってお面が異なるように、大晦日のなまはげの行事も異なります。

一般的にはその年になまはげに扮する若者が集い、ケデに身を包み、お面が渡されます。神事に臨んでから個人宅に向かいます。

個人宅では入っていいかどうかの確認をして(その年に不幸があった家や病人がいる家には入らずに、玄関先で足踏みをしてから次の家に向かいます)、いよいよ家に入ります。

「泣く子はいねがー」「嫁は早起きするがー」「怠け者はいねがー」と、大きな声で言いながら家中を回ります。

家の主人はなまはげをなだめ、料理や酒でなまはげをもてなします。なまはげと主人は家族や田畑の様子を問答し、その後になまはげは翌年の家族の無病息災と豊作を祈願し、席を立って四股(しこ)を踏みます。

こうした儀式を終えて、なまはげは個人宅を去っていくのです。なまはげは怠け者をいましめるだけではありません。来年の豊穣と家内安全をもたらす幸運の神でもあるのです。

なまはげ館などで販売されている、なまはげには「開運」「商売繁盛」「無病息災」などと書かれていました。そう、なまはげはお守りなのです!

※今回のプレゼントは全長(ひも部含む)45cmもある大きななまはげです。

余談になりますが、なまはげ館を出た後に男鹿水族館GAOに立ち寄りました。日本海の展示やはたはた水槽も興味深いのですが、ペンギンの展示もありました。その前に、「ペンギン社」がありました。ペンギンは一生、パートナーを替えないそうです。カップルやご夫婦ならここで願掛けするのもいいかもしれませんね。

「おでかけマガジン」より、みなさまへ読者プレゼント実施中!

【おでかけのヒント】

●なまはげ館
https://www.namahage.co.jp/namahagekan/
●男鹿水族館GAO
http://www.gao-aqua.jp/index.html
●男鹿ナビ
https://oganavi.com/

●クルマでおでかけ
東北自動車道北上JCTから秋田自動車道昭和男鹿半島IC。ICから男鹿市中心部まで約20分。
JR利用で秋田駅からレンタカー、飛行機利用で秋田空港、大館能代空港からレンタカーといった方法もあります。
< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
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