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暖かくなってくると海に行きたくなる人が増えます。ビーチに立って、海をただぼーっと眺めているだけでなく、アクティブに波と戯れたいものです。そこで、この夏はサーフィンを始めてみませんか?

波に乗る快感を味わいたくて


ワイキキは初めてサーフィンの最適地だ


どこまでも透明なワイキキの海


「今までにしていなかったことを始めてみよう」と、数年前に突然思いついた。年齢を重ねるごとに、段々に自分というものが枠の中に留まってしまっている気がしたのだ。
別に老後のために…というわけではないのだが、新しいチャレンジは自分の枠を広げてくれる気分になった。



「趣味」に○印を付けろというアンケートが多い。Web上でも頻繁に尋ねられる。アンケートを集める側が、それぞれの趣味を知り、関連した広報メールを送ろうという算段もあるのだろう。
しかし、僕の場合はこれに悩んでしまう。
編集と出版、執筆が仕事だ。とくに旅とスポーツを題材するケースが多い。となると、旅やスポーツを「趣味」とするのは違う気がする。もちろん、読書もそうだ。
パソコン!…それは仕事の相棒だ。
着るものには無頓着だし、音楽も普通の人のように聴いて、映画も話題になったものは観る。国際線の機内サービスでは連続3本ぐらい観る。
でも、それぞれが趣味かと問われれば違う。
こうして、僕は壮大なる無趣味男となったのである。



そんなこともあって、「趣味」になりえることを新たに始めようと思った。
一つはギターだ。通販で初心者セットを買い、CやG、Amのコードを弾き、すぐにFやBmでつまずくものの、なんとかその壁も乗り越えた。
次に始めたのは少年サッカークラブのコーチである。学生時代にサッカーをしていたが、子どもたちにサッカーを教えるというのは、なかなか新鮮だ。子どもといえどもレギュラー争いはあるし、そこにコーチたちや父兄の思惑もからむ。



最近、始めたのがサーフィンだ。1月後半にハワイに2週間滞在したのだが、そのときにサーフィンをした。
20歳のころ、一度だけ湘南でサーフィンをして、波の上に立てずに挫折した。20年前、ワイキキで1日だけサーフィンをした。以来のサーフィンである。どうなることやらと、ワイキキにあるサーフショップのレッスンを申し込んだのだった。

ハワイでよく見る光景


パドリングで海に出る


ベテランはパドリングが速い!


湘南で初めてサーフィンをしたときは、まったくうまくいかなかった。ほとんど、波の上に立てなかった。
理由は簡単だ。当時、スキーのインストラクターのバイトをしていた僕は、「板の上に立つのは得意」だと思い込んでいた。
だから、見たまま、見まねでサーフィンに挑んだ。コーチの存在はなく、仲間と勝手に海に出た。これでは、うまくいくわけがない!



20年前のワイキキは別だった。このときは雑誌の取材だったのだが、若いころに何度もトロフィーを掲げた名サーファーのスクールに入った。
ワイキキの海にコーチと共に入り、コーチのかけ声でパドリングを開始し、これまたかけ声でボードの上に立つ。
ハワイの波といえば、冬のノースエリアのようなビッグウェーブの画像をしばしば目にする。パイプラインもまさに冬のノースの巨大な波の代表だ。
ところが、ワイキキの波は違う。70cmくらいのおだやかな波が立ち、それが80mぐらい崩れない。だから、うまくボード上に立てば、どこまでも波に乗っていられる。
肝心なのは、コーチのかけ声である。声のタイミングが絶妙で、それに合わせることでうまく立てるのだ。
タイミングがずれたとしても、コーチがボードのテールを押してくれるので、自然に波に乗れてしまう。
こうして、僕は20年前、まるで加山雄三(古いですけど、1963年の映画『ハワイの若大将』)のように、ダイヤモンドヘッドを背にワイキキの波に乗っていたのだ。



「初めて?」サーフショップのカウンター係が聞く。たった一度の20年前を言っても仕方ない。「そうだ」と言うと、コーチを紹介され、ショップ内に置かれたボードの上に腹ばいに寝かせられた。
コーチのかけ声で起き上がり、正しい位置に立つことを繰り返す。その後にボードを渡される。思いの外重い。どうやら、初心者用の波上で安定感があるボードだった。
ビーチで再び寝て起きて立つ、の練習を行い、間もなく他のベテランサーファーに混じって、沖へ向かってパドリングを始めた。
コーチが先にすいすい行く。その後にへいこらと付いて行く。「サーフィンをするには、もっと腕の筋肉を鍛えないとダメだな」と強く思った僕だった。

コーチと共に海に入れば楽に波に乗れる


波に乗った初心者。彼も初めてのサーフィンだ


やがてコーチは波待ちをしている多くのサーファーたちがいるポイントで止まり、僕を口笛で呼んだ。
コーチが僕のボードのテールを抑え、ビーチ方向に向きを変える。
ボードに寝転がったまま沖を見る。時折、手頃な波が来る。
「パドリング!!」、突然コーチが叫ぶ。あわてて腕をぐるぐるまわす。次の瞬間、「立て!!!」となぜか日本語が飛ぶ。
腕を伸ばし、膝を立て、立ち上がろうとするが、そうはうまくいかない。コーチがテールを押してくれたから、ボードは波を捕らえている。
僕は立て膝状態で、そのまま50mくらい波に乗った。
なんとも無様な再デビューだった。でも、間違いなく波に乗ったのだ。



こんな練習がしばらく続いた。やがて、両足で立ち上がることにも成功。いい気分で波に乗った。だが、腕の筋肉に限界が来た。
コーチに「もうギブアップだ。腕が持たない」と宣言してビーチに戻ったのだった。



その3日後。僕は再びサーフショップにいた。コーチは不要だ。1時間7ドルのレンタルボードを借りて海に出た。今度は軽くて操作性のいいというロングボードを借りた。ビーチまでの歩行が苦にならない。
が、海に出たとたんに参ったと思った。小さな波やバドリングでもボードがふらついてしまう
仕方なくサーフショップに戻り、「やはりビギナー用を貸してくれ」と、ボード交換を申し入れ、代わりのボードを持ってきた係員に「グッドラック」と笑われた。



コーチがいないぶん、波の上に立つタイミングを計るのに苦労したが、それでも波の上に立つことができた。これぞ、独り立ちだ。
悪戦苦闘する僕の横をパドルボーダーの太り気味のおじさんが、すいすい波に乗っていった。
「次はこれだな…」なんて、考えている僕がいた。



波が崩れやすい日本では、ワイキキより苦労するだろう。でも、この夏は湘南リベンジをしたいと思っているこの頃なのだった。


【おまけ動画】
簡単そうに見えるパドルボード


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< PROFILE >
篠遠 泉
休日と旅のプロデューサー。主な出版物に『ぶくぶく自噴泉めぐり』『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがあるほか、『温泉批評』『旅行読売』などに執筆中。観光地の支援活動も行っている。
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