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モノレール。文字通り、1本の軌条によって誘導されて走る乗り物です。日本では1957年に上野動物園で開業したモノレールが第一号。空中を走るモノレールからの景色は、少しばかり地上にいる時と異なります。空中からの散策を楽しんでみませんか?

カラフルな上野動物園のモノレール


羽田空港を目指す東京モノレール


東京モノレールには下町風情漂う場所も


はっきりと覚えている。初めてモノレールに乗ったのは、上野動物園のそれだった。
5、6歳の頃だっただろうか。動物園に連れていってもらい、サル山のある東園と、池のほとりの西園を行き来するのに乗ったのだ。今の車両のようにカラフルではなく、動物なんて描かれていなかったと思う。
走行距離はわずか300m、乗車時間は1分半しかない。
それでも、空中を行く感じが、ぼくをウキウキの気分にした。



上野動物園のモノレールは、正式には「上野懸垂線」という。高いところに設置された棒にぶら下がる懸垂運動の懸垂だ。写真でもわかるように、モノレールに車両がぶら下がって走る。
ちなみに、上野動物園のモノレールは動物園の遊具施設ではなく、鉄道事業法に基づく交通機関である。管轄は東京都交通局。つまり、都電や都バス、都営地下鉄と同じなのだ。



今年の1月23日、ショッキングなニュースが新聞の片隅に載った。上野懸垂線の運行を11月1日から休止するという東京都交通局と東京都建設局の発表だ。
現在の車両は40形と呼ばれる2両編成のもので、とてもかわいい車両なのだが、走り出してすでに18年以上が経っている。車両の老朽化に伴い、路線そのものの休止も決定された。
今後の計画は定かになってはいない。



あのウキウキした体験を再確認しに、近いうちに上野動物園を訪れようと思う。
僕は飛行機でも窓側の席を確保する。眼下に過ぎゆく街並みや山、川、島を眺めるのが好きなのだ。
モノレールはそれほどの規模ではないが、一段階上からの景色はバスや電車などよりも雄大で楽しめる。
現在、日本の10地域でモノレールが走っている。実は過去に走っていたのに廃止されたモノレールも6路線ある。
クルマでおでかけして、モノレールに乗って気軽な空の旅を楽しんでみたいものだ。

東京湾と富士山を望む東京モノレール


東京西部を走る多摩都市モノレール


街並みを見下ろす千葉都市モノレール


上野懸垂線は「動物園の遊具施設ではありません」という注釈が不自然なほど、モノレールは遊び心の要素が詰まっている。
通勤や通学に日常的に使用するならともかく、普段モノレールに乗っていない人たちは、クルマでどこかの駅のそばまででかけ、コインパーキングに駐めてモノレールの旅を体験しよう。



日本全国10カ所でモノレールが走っている。
種類は大きく分けて2種類だ。ひとつは上野動物園と同じ「懸垂式」、レールにぶら下がっているタイプだ。
もうひとつは「跨座式」、1本のレールの上に、またがっているようなタイプだ。



それでは、日本のモノレールを列記してみよう。

【懸垂式】
●千葉都市モノレール(千葉県):延長15.2km
●上野懸垂線(東京都):延長0.3km
●湘南モノレール(神奈川県):延長6.6km
●スカイレールサービス広島短距離交通瀬野線(広島県):延長1.3km

【跨座式】
●舞浜リゾートライン(千葉県):延長5.0km
●東京モノレール(東京都):延長17.8km
●多摩都市モノレール(東京都):延長16km
●大阪高速鉄道(大阪府):延長28km
●北九州高速鉄道(福岡県):延長8.8km
●沖縄都市モノレール(沖縄県):延長12.9km



余談ながら廃止されたモノレールはテーマパークと関連が強い路線が多い。たとえば、向ヶ丘遊園モノレール線(神奈川県・東京都)、ドリームランド線(神奈川県)、モンキーパークモノレール線、東山公園モノレール線(いずれも愛知県)など。
テーマパーク本体が姿を消したケースもある。年配の読者の中には、「小さい頃に、あのテーマパークに行った時に乗った」という方もいるのではないだろうか。

大阪のモノレール


夕陽に染まる大阪モノレール


首里城を背景に沖縄のモノレールは走る


「飛行機は窓側の席を取る」と前述した。
眼下の世界を眺めるのが好きだからだ。しかし、窓側席を確保したといっても油断はできない。
窓の下に大きな翼が広がっているケースもあれば、まれに窓がない窓側席も存在する(これが航空会社の座席シート表ではわかりにくいんですよね!)。



日本にも何種類もの航空機が就航しているが、ぼくが好きなのは北海道や離島、短距離で使用されているボンバルディアだ。
ボーイング777、787などの主力飛行機ならば、席が8列、10列あったりするので窓側席の争奪戦は厳しくなる。センター部には巨大な翼があって、眼下が見にくい。
ところが、ボンバルディア。席は2列×2列。しかも、翼が上にある。プロペラ機で短距離飛行だから比較的高度の低いところを飛ぶ。
これはもう絶景。眼下の景色が存分に眺められるのだ。



モノレールもそうである。ぼくは跨座式よりも懸垂式が好きだ。千葉や湘南のモノレールは、下にレールが見えないから、空中に浮かんでいるような錯覚に陥る。
景色もよく見える。ワクワクするような世界が窓の外に広がっているのだ。



とはいえ、跨座式だって上空を行く場面がほとんどだ。ベイサイドを眺め、遠くに山々を眺め、眼下に住宅地や道を眺める。
気軽に体験できる空中体験なのだ。
個人的な話だが、僕は地下鉄が嫌いだ。朝一番から地下鉄に乗っていると、なんだか憂鬱になる。可能なら地下鉄の代わりにバスを使う。道を歩く。それは、景色が見られない世界、太陽が当たらない世界が、少々ネガティブに感じるからだ(地下鉄ファンの方、働いていらっしゃる方、申し訳ございません。個人の感想です)。
その点、モノレールは開放的な空間を疾走する、非常にポジティブな印象を搭乗者に与えてくれる乗り物だと思うのだ。

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< PROFILE >
篠遠 泉
休日と旅のプロデューサー。主な出版物に『ぶくぶく自噴泉めぐり』『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがあるほか、『温泉批評』『旅行読売』などに執筆中。観光地の支援活動も行っている。
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