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前回の白神山地に続いて、世界遺産に登録された場所を取り上げます。こちらも白神山地同様に、ありのままの森が残されたことが世界遺産への評価の理由でした。クルマでは行けませんが、一度は訪れたい自然のパワースポットです。

屋久島に見る巨大杉


ヤクシカとの出合い


屋久島は日本では北海道や本州、四国、九州を除いて7番目に面積のある島です。面積は約504㎢、周囲は130km。とはいえ、その大きさは東京23区ほどしかありません。



島の約90%が山林で、特筆すべきはこの大きさのなかに九州最高峰の宮之浦岳(標高1935m)をはじめとする1000mを超える山が46もあることです。
驚きませんか? 九州にはたとえば日本百名山に選出されている阿蘇山(1592m)や霧島山(1700m)、九重山(1787m)があります。こちらのほうが高いイメージですが、宮之浦岳のほうがずっと高いのです。



これだけの自然があるのですから、「日本の植物種の7割以上」が確認されています。加えて固有種40種、屋久島を南限とする植物が約140種、反対に北限とする植物が約20種もあります。
こういったことからも、「東洋のガラパゴス」と呼ばれているのがうなずけます。



屋久島の貴重な自然が評価されて世界遺産に登録されたのは1993年のことです。ニュースでもずいぶん取り上げられましたから、「縄文杉」をはじめとする樹齢の高い杉を画像で見た方は多いでしょう。
屋久島に杉は当たり前のように生えていそうですが、実は杉の南限も屋久島なのです。



通常なら杉の樹齢は300年ほど。ところが屋久島には1000年どころか2000年を超えるものがあります。その要因は屋久島の温暖な気候と多量の降水量にあると考えられています。
たとえば、「紀元杉」は樹高19.5mで樹齢2000年。
「大王杉」は根回り43m、樹高24.7m、樹齢3000年。
そして、1966年に発見された「縄文杉(大岩杉)」は発見者の推測では樹齢6900年でした。その後、大学などの研究によって樹齢7200年説がある一方、もっと短い説も生まれましたが、未だにはっきりしません。
いずれにせよ、人間には計り知れない歴史があるのは間違いなさそうです。

トロッコ線の跡を歩いて森へ


圧倒されるほど大きな屋久杉の幹


樹齢1000年を超える杉を「屋久杉」と呼び、現在では屋久島のシンボルになっています。
とくに樹齢1000年以上の巨木が残ったのは、年輪がゆがみ、山地での製材が不可能だったために、伐採の対象にならなかったからです。
実は、山地で製材できた杉は、かなりの本数を過去に伐採されてしまっています。



海の上に浮かび、台風や豪雨もしばしば訪れる屋久島の杉は耐菌性に強く、耐久性も優れていました。
屋久島の良質な杉材の評判は、やがて京の都まで届きました。
豊臣秀吉が京に大仏殿を建立する際に、石田三成が島津義久に命じて屋久島の木材資源の調査を命じています。



江戸時代になると、薩摩藩による屋久杉の伐採は本格化します。この時代に、屋久杉の良木はほとんど伐採されてしまいました。
伐採跡地にも杉が徐々に育ち、やがて二次林、三次林が誕生。明治以降は山林の大部分が国有林となり、今度は二次林、三次林が伐採されています。



現在、樹齢1000年以上の「屋久杉」が残るのは小楊枝川流域や永田川流域、安房川支流、宮浦川上流域などのわずかな地域です。
そのために、屋久杉を観に行こうと思えば、ガイドと一緒に山深い地域まで行かなければならないのです。
たとえば、「ヤクスギランド」は屋久島ツアーハイキングの目玉地域の一つですが、標高1000m~1300mに位置します。この中に遊歩道があり、30分から90分の4コースが整備されています。



屋久杉を目の前にするためには、来訪者はそれなりに歩く覚悟が必要です。

ウイルソン株と名付けられた切り株


美しい屋久島の海


トビウオの唐揚げが島らしく


私が屋久島を訪れたのは、屋久島に移住し、レストランを開店した先輩からの誘いがあったからです。
「一度来てごらん。自然への価値観が変わるよ」と、笑顔で言われました。
それから訪れるまでは、かなり時間がかかりました。クルマで気軽におでかけできる場所ではないからです。



屋久島は鹿児島県ですが、鹿児島より南135kmに位置します。
大阪、福岡からだと飛行機の直行便がありますが、そのほかの地域からだと上記もしくは鹿児島で乗り継ぎとなります。
鹿児島空港から屋久島へは約35分のフライトです。1日5便が6月時点で飛んでいます。料金は片道で12800円~が目安です。



高速船だと鹿児島本港から最短で1時間45分。高速船は北部の宮浦、ヤクスギランドに比較的近い安房に着きます。これらの港の周囲には宿泊施設も多いので、旅がしやすいでしょう。運航は1日6~7便です。料金は片道7000円になります。



さらに、朝1便運航の大型客船も就航しています。乗船時間は4時間。往復割引だと2等で9500円と1万円を切ります。



私はというと、東京発のツアーで行きました。ほとんどの旅を私は個人手配します。しかし、飛行機と宿泊、トレッキングツアーが付いたパックツアーを選んだのでした。
待ちに待ったトレッキングの日。森を行くとヤクシカが姿を現しました。巨大な杉も見られ、やがて秀吉の命によって切られた樹齢3000年の巨木が登場しました。ウイルソン博士によって世界に知られたために「ウイルソン株」と名付けられた切り株です。ハート型なのが印象的でした。
期待どおりのトレッキングになりました。



宿からは美しい海が眺められました。屋久杉ばかりがクローズアップされるために、“森林”のイメージが強い屋久島ですが、ここは海に浮かぶ島。その美しさも特筆すべきものでした。

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●本文でも触れましたが、島に渡る方法は3通り。個人手配もできますが、縄文杉トレッキングツアーが付いたツアーが気軽かもしれません。
< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
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